下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成9年 問6

【問 6】 物権変動に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Aが、Bに土地を譲渡して登記を移転した後、詐欺を理由に売買契約を取り消した場合で、Aの取消し後に、BがCにその土地を譲渡して登記を移転したとき、Aは、登記なしにCに対して土地の所有権を主張できる。

2 DとEが土地を共同相続した場合で、遺産分割前にDがその土地を自己の単独所有であるとしてD単独名義で登記し、Fに譲渡して登記を移転したとき、Eは、登記なしにFに対して自己の相続分を主張できる。

3 GがHに土地を譲渡した場合で、Hに登記を移転する前に、Gが死亡し、Iがその土地の特定遺贈を受け、登記の移転も受けたとき、Hは、登記なしにIに対して土地の所有権を主張できる。

4 Jが、K所有の土地を占有し取得時効期間を経過した場合で、時効の完成後に、Kがその土地をLに譲渡して登記を移転したとき、Jは、登記なしにLに対して当該時効による土地の取得を主張できる。

【解答及び解説】

【問 6】 正解 2

1 誤り。Aが詐欺で売買契約を取り消した段階で、不動産の所有権はBからAへ復帰することになる。その後、BがCに対して土地を譲渡すれば、二重譲渡と同じになり、AとCは登記を先に備えた方が優先することになる。本肢ではCは登記を備えているので、AはCに対して土地の所有権を主張することはできない。
*民法177条

2 正しい。共同相続人の一人が相続財産である土地を自己の単独名義で登記しても、それは他の共同相続人の持分については無権利の登記である。したがって、本肢でもDから譲り受けたFは、Eの持分については無権利であり、Eは登記なしにFに対して自己の相続分を主張することができる。
*民法177条

3 誤り。特定遺贈というのは、特定の財産を遺言により贈与することである。したがって、IがGを相続した場合とは異なり、HとIは対抗関係になり、先に登記をした方が優先する。
*民法177条

4 誤り。本肢のLは、時効完成後の第三者ということになり、JとLは二重譲渡と同じ関係となり、登記を先に備えた方が優先する。したがって、Jは登記なくLに土地の取得を主張できない。
*民法177条


【解法のポイント】本問は大変な難問だったと思います。特に、肢1、肢2、肢3は難しいですね。こういう、物権変動の問題は、実際に不動産が動いた過程を正確に追いかけて考えるというのが、判例の理解には有効です。肢1では、取り消しによりB→Aに所有権復帰、B→Cに譲渡、で二重譲渡です。肢4は、時効取得でK→J、K→Lに譲渡、で二重譲渡です。肢2は、Eの「持分」に関しては、Dはもともと無権利で、D→Fという流れはありません。肢3は、特定遺贈が、贈与と同じだという知識がいるので、難しくなっているわけですが、贈与だと分かれば、二重譲渡というのは、すぐに分かると思います。一度、じっくり考えて見て下さい。