下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。
宅建 過去問解説 平成9年 問4
【問 4】 AがBに対して有する100万円の貸金債権の消滅時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 Aが弁済期を定めないで貸し付けた場合、Aの債権は、いつまでも時効によって消滅することはない。
2 AB間に裁判上の和解が成立し、Bが1年後に100万円を支払うことになった場合、Aの債権の消滅時効期間は、和解成立の時から5年となる。
3 Cが自己所有の不動産にAの債権の担保として抵当権を設定(物上保証)している場合、Cは、Aの債権の消滅時効を援用してAに抵当権の抹消を求めることができる。
4 AがBの不動産に抵当権を有している場合に、Dがこの不動産に対して強制執行の手続を行ったときは、Aがその手続に債権の届出をしただけで、Aの債権について時効の完成猶予の効力が生じる。
【解答及び解説】
【問 4】 正解 3
1 誤り。債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないときに時効消滅する。そして、消費貸借において、当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。したがって、返還時期を定めない消費貸借においては、貸金債権の消滅時効は貸し付けたときから相当期間を経過したときから起算され、5年で時効消滅する。
*民法166条1項1号
2 誤り。債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないときに時効消滅する。そして、本肢では和解が成立し、その1年後に支払うことになっているわけであるから、債権者は、和解成立から1年後に初めて100万円を請求することができる。したがって、Aの債権は、和解成立時ではなく、和解成立の1年後から5年で時効消滅する。
*民法166条1項1号
3 正しい。時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、「物上保証人」、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
*民法145条
4 誤り。Dが不動産に対して強制執行の手続を行った場合に、Aにその強制執行の手続に単に債権の届出をしただけでは、Aの債権について消滅時効の完成猶予の効力は生じない(判例)。
*民法147条
【解法のポイント】肢1は確実に押さえておいて下さい。肢2は、肢1の考えの応用編みたいな問題で、考えさせるいい問題だと思います。単なる暗記では解けません。解説をよく読んでおいて下さい。肢3は初めて出題された問題だと思いますが、再度の出題の可能性があります。肢4は非常に難しいので、あまり気にする必要はありません。