下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成8年 問27

【問 27】 土地区画整理事業の施行地区において仮換地の指定がされた場合に関する次の記述のうち、土地区画整理法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 仮換地の指定を受けて、その使用収益をすることができる者が、当該仮換地上で行う建築物の新築については、都道府県知事等の許可が必要となる場合はない。

2 従前の宅地の所有者は、仮換地の指定により従前の宅地に抵当権を設定することはできなくなり、当該仮換地について抵当権を設定することができる。

3 従前の宅地の所有者は、換地処分の公告がある日までの間において、当該宅地を売却することができ、その場合の所有権移転登記は、従前の宅地について行うこととなる。

4 仮換地の指定を受けた者は、その使用収益を開始できる日が仮換地指定の効力発生日と別に定められている場合、その使用収益を開始できる日まで従前の宅地を使用収益することができる。

【解答及び解説】

【問 27】 正解 3

1 誤り。土地区画整理事業の認可等の公告があった日後、換地処分の公告がある日までは、施行地区内において、土地区画整理事業の施行の障害となるおそれがある建築物の新築等を行おうとする者は、国土交通大臣が施行する土地区画整理事業にあっては国土交通大臣の、その他の者が施行する土地区画整理事業にあっては都道府県知事等の許可を受けなければならない。これは仮換地上で行う建築物の新築についても同様であるから、都道府県知事等の許可が必要となる場合がある。
*土地区画整理法76条1項

2 誤り。仮換地が指定された場合においては、従前の宅地について権原に基づき使用し、又は収益することができる者は、仮換地について使用又は収益をすることができるものとし、従前の宅地については、使用し、又は収益することができないものとする。したがって、従前の宅地については使用・収益はできないが、所有権まで失うわけではないから、従前の宅地に抵当権を設定することができる。また、仮換地については使用・収益しかできないので、仮換地に抵当権を設定することはできない。
*土地区画整理法99条1項

3 正しい。肢2で述べたように、従前の宅地の所有者は、仮換地が指定されても、従前の宅地について所有権を失うわけではないから、従前の宅地を売却することができ、さらに従前の宅地について所有権移転登記を行うこともできる。
*土地区画整理法99条1項

4 誤り。仮換地の指定の効力が発生すると、従前の宅地については使用収益することができない。これは、「仮換地の使用収益を開始できる日が仮換地指定の効力発生日と別に定められている場合」であっても同様である。
*土地区画整理法99条1項・2項


【解法のポイント】肢4については理解できますでしょうか?仮換地の指定の効力は、1.従前の宅地の使用・収益の停止、2.仮換地の使用・収益権の発生、という2つがあります。簡単に言えば、使用・収益権が従前の宅地から仮換地に移行するわけです。ところが、問題文の「仮換地の使用収益を開始できる日が仮換地指定の効力発生日と別に定められている場合」というのは、前述の2.の仮換地の使用・収益権の発生という効力が、一時的に引き伸ばされているわけです。しかし、1.の従前の宅地の使用・収益の停止という効力はそのままなわけですから、結局、従前の宅地の所有者は、一時的に従前の宅地も、仮換地も使用・収益できないことになります。その分の損害は、施行者が損失補償することになります。