宅建 過去問解説 平成8年 問15
【じっくり解説】
根拠となる条文は、まず不動産登記法33条です。
「第1項 不動産の所有者と当該不動産の表題部所有者とが異なる場合においてする当該表題部所有者についての更正の登記は、当該不動産の所有者以外の者は、申請することができない。
第2項 前項の場合において、当該不動産の所有者は、当該表題部所有者の承諾があるときでなければ、申請することができない。」
次に、不動産登記令別表第2項(表題部所有者についての更正の登記)の「添付情報」も関連してきます。
添付情報…「表題部所有者の承諾を証する当該表題部所有者が作成した情報又は当該表題部所有者に対抗することができる裁判があったことを証する情報」
この2つの条文を一つにまとめたのが本問の文章になりますので、結論としては「正しい」ということになります。
この条文は、不動産登記法の問題としては、比較的読みやすく、理解しやすいものだったのではないかと思います。
「不動産の所有者と当該不動産の表題部所有者とが異なる場合においてする当該表題部所有者についての更正の登記」という部分ですが、「更正の登記」の意味は、理解しておいて下さい。
更正の登記というのは、登記事項に錯誤又は遺漏があった場合に当該登記事項を訂正する登記です(第2条16号)。要するに、最初から間違えて登記されていたような場合です。
「変更」の登記は、正しく登記されたが、その後権利の変動などで、登記事項に変更があった場合になされるもので、「更正」の登記とは、この点で異なります。
これ自体、本試験で出題されたことがあります。
そして、「不動産の所有者と当該不動産の表題部所有者とが異なる場合」に、その更正の登記が、当該不動産の所有者以外の者は、申請することができないことは当然でしょう(第1項)。
ただ、この場合、現在一応登記されている表題部所有者の承諾が必要なのも当然でしょう。
更正の登記が行われることにより不利益を受ける現在の表題部所有者の承諾を得た上で、本来の不動産の所有者が表題部所有者の更正の登記をすることになります。
最後に、この現在の表題部所有者の承諾があることを証明するため、申請情報の添付情報として、「表題部所有者の承諾を証する当該表題部所有者が作成した情報又は当該表題部所有者に対抗することができる裁判があったことを証する情報」が必要ということになります。
問題文には、上記添付情報のうちの後半の「当該表題部所有者に対抗することができる裁判があったことを証する情報」という部分が抜けていますが、前半の「表題部所有者の承諾を証する当該表題部所有者が作成した情報」があれば、問題なく更正の登記を申請することができます。