下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成8年 問15

【問 15】 不動産登記に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 地上権の設定の登記がされている土地の分筆の登記は、所有権の登記名義人又は地上権者が申請することができる。

2 共有名義の土地の地目変更の登記は、共有者全員で申請しなければならない。

3 建物の表題部に記載した所有者の更正の登記は、申請情報と併せて表題部所有者の承諾を証する当該表題部所有者が作成した情報を提供して、当該表題部所有者となる者が所有権を有することを証する情報を提供して申請することができる。

4 抵当権の設定の登記がされている建物の滅失の登記は、その抵当権の登記を抹消した後でなければ申請することができない。

【解答及び解説】

【問 15】 正解 3

1 誤り。分筆又は合筆の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。したがって、地上権の設定の登記がされている土地においても、地上権者が分筆の登記をすることはできない。
*不動産登記法39条1項

2 誤り。地目又は地積について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から1月以内に、当該地目又は地積に関する変更の登記を申請しなければならない。このとき、当該土地が共有のときは、共有者の一人が申請すればよい。
*不動産登記法37条1項

3 正しい。不動産の所有者と当該不動産の表題部所有者とが異なる場合においてする当該表題部所有者についての更正の登記は、当該不動産の所有者が申請することができるが、その場合、当該表題部所有者の承諾があるときでなければ、申請することができないが、そのため添付情報として、表題部所有者の承諾を証する当該表題部所有者が作成した情報又は当該表題部所有者に対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供しなければならない。

【じっくり解説】

根拠となる条文は、まず不動産登記法33条です。

「第1項 不動産の所有者と当該不動産の表題部所有者とが異なる場合においてする当該表題部所有者についての更正の登記は、当該不動産の所有者以外の者は、申請することができない。
第2項 前項の場合において、当該不動産の所有者は、当該表題部所有者の承諾があるときでなければ、申請することができない。」

次に、不動産登記令別表第2項(表題部所有者についての更正の登記)の「添付情報」も関連してきます。

添付情報…「表題部所有者の承諾を証する当該表題部所有者が作成した情報又は当該表題部所有者に対抗することができる裁判があったことを証する情報」

この2つの条文を一つにまとめたのが本問の文章になりますので、結論としては「正しい」ということになります。

この条文は、不動産登記法の問題としては、比較的読みやすく、理解しやすいものだったのではないかと思います。

「不動産の所有者と当該不動産の表題部所有者とが異なる場合においてする当該表題部所有者についての更正の登記」という部分ですが、「更正の登記」の意味は、理解しておいて下さい。

更正の登記というのは、登記事項に錯誤又は遺漏があった場合に当該登記事項を訂正する登記です(第2条16号)。要するに、最初から間違えて登記されていたような場合です。

「変更」の登記は、正しく登記されたが、その後権利の変動などで、登記事項に変更があった場合になされるもので、「更正」の登記とは、この点で異なります。

これ自体、本試験で出題されたことがあります。

そして、「不動産の所有者と当該不動産の表題部所有者とが異なる場合」に、その更正の登記が、当該不動産の所有者以外の者は、申請することができないことは当然でしょう(第1項)。

ただ、この場合、現在一応登記されている表題部所有者の承諾が必要なのも当然でしょう。

更正の登記が行われることにより不利益を受ける現在の表題部所有者の承諾を得た上で、本来の不動産の所有者が表題部所有者の更正の登記をすることになります。

最後に、この現在の表題部所有者の承諾があることを証明するため、申請情報の添付情報として、「表題部所有者の承諾を証する当該表題部所有者が作成した情報又は当該表題部所有者に対抗することができる裁判があったことを証する情報」が必要ということになります。

問題文には、上記添付情報のうちの後半の「当該表題部所有者に対抗することができる裁判があったことを証する情報」という部分が抜けていますが、前半の「表題部所有者の承諾を証する当該表題部所有者が作成した情報」があれば、問題なく更正の登記を申請することができます。

*不動産登記法33条1項・2項、不動産登記令別表2項

4 誤り。建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から1月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。このとき、抵当権の登記を抹消しなければならない旨の規定はない。
*不動産登記法57条


【解法のポイント】不動産登記法は、大きな改正がありましたが、内容的には本問については改正はありません。こういうものは出題されやすいので注意して下さい。