下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成8年 問10

【問 10】 居住用建物を所有するAが死亡した場合の相続に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 Aに、配偶者B、Bとの婚姻前に縁組した養子C、Bとの間の実子D(Aの死亡より前に死亡)、Dの実子E及びFがいる場合、BとCとEとFが相続人となり、EとFの法定相続分はいずれも1/8となる。

2 Aに、配偶者B、母G、兄Hがいる場合、Hは相続人とならず、BとGが相続人となり、Gの法定相続分は1/4となる。

3 Aに法律上の相続人がない場合で、10年以上Aと同居して生計を同じくし、Aの療養看護に努めた内縁の妻Iがいるとき、Iは、承継の意思表示をすれば当該建物を取得する。

4 Aに、その死亡前1年以内に離婚した元配偶者Jと、Jとの間の未成年の実子Kがいる場合、JとKが相続人となり、JとKの法定相続分はいずれも1/2となる。

【解答及び解説】

【問 10】 正解 1

1 正しい。まず、相続人を確定すると、配偶者は常に相続人となる(民法890条)。次に、養子Cであるが、Bとの婚姻前に縁組しているが、Aの養子であることに変りはないので、実子と同じ相続分で相続する(民法887条1項)。つぎに、実子Dであるが、Aの死亡前に死亡しているので、その子E及びFが代襲相続することになる(民法887条2項)。以上より、相続人はB、C、E及びFとなる。そして、EとFの相続分は、本来Dが相続すべきであった、1/4をさらに2人で分けることになるので、それぞれ1/8となる(民法900条、901条1項)。
*民法890条、887条1項・2項、900条、901条1項

2 誤り。本肢で、相続人がBとGになるという点は正しい。兄弟姉妹は、子及び直系尊属がいないときに、はじめて相続人となれるからである。そして、相続人が配偶者及び直系尊属の場合は、配偶者が2/3、直系尊属が1/3となる。
*民法889条1項2号、900条2号

3 誤り。被相続人に相続人がいない場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。したがって、Iが承継の意思表示をしても、家庭裁判所が審判で認めない限り、Aの財産を承継することはできない。
*民法958条の3

4 誤り。相続人となる配偶者は、被相続人死亡の時の配偶者でなければならず、死亡前1年以内であってもすでに離婚しているJは相続人とはならない。したがって、Aの財産はすべてKが相続する。
*民法890条


【解法のポイント】本問は1肢ごとに事例が異なっているので、面倒な問題ですね。本問のような相続の事例問題では、相続人の確定→相続分の確定という手順を踏んで下さい。