下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成7年 問47

【問 47】 宅地建物取引業者Aは土地区画整理組合Bの施行する土地区画整理事業の施行地区内の宅地(造成工事完了済み)についてCに売買又は売買の媒介をすることとした。この場合、宅地建物取引業法の規定によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。なお、B及びCは、宅地建物取引業者ではないものとする。

1 Aが仮換地指定後の宅地の売買の媒介を行う場合でその宅地の仮換地が住宅先行建設区に指定されているときには、Aは、宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項説明において、Cに土地区画整理法第117条の2の規定に基づく住宅建設の時期の制限の概要を説明しなければならない。

2 Aは、自ら売主として、Bが換地処分後に取得する保留地予定地(以下この問において「保留地予定地」という。)をCに販売するときには、あらかじめ、Bからその保留地予定地を取得する契約を締結しておかなければならない。

3 Aが、施行地区内の土地を一時借り受け設置したテント張りの案内所において、BC間の保留地予定地の売買契約の締結を媒介した場合、Cは、当該売買契約を宅地建物取引業法第37条の2の規定により解除することができる。

4 Aが保留地予定地を取得する契約を締結し、自ら売主として販売する場合、その時期が換地処分の公告前であっても、宅地建物取引業法第41条の2の規定により手付金等の保全措置を講じて、Cから代金の20パーセントの手付金を受領することができる。

【解答及び解説】

【問 47】 正解 3

1 正しい。宅地建物取引業者は、宅地の売買の媒介においては、土地区画整理法第117条の2第1項及び第2項の規定に基づく住宅建設の時期の制限の概要を重要事項として説明しなければならない。
*宅地建物取引業法35条1項2号、同法施行令3条1項6号

2 正しい。宅地建物取引業者は、自己の所有に属しない宅地又は建物について、原則として自ら売主となる売買契約を締結してはならないが、宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得できることが明らかな場合は、売買契約を締結できる。その宅地建物取引業者が宅地を取得できることが明らかな場合として、「宅地建物取引業者が、当該土地区画整理事業に係る換地処分の公告の日の翌日に当該施行者が取得する当該保留地予定地である宅地を当該施行者から取得する契約を締結しているとき」というのがあるので、Aは、Bと保留地予定地を取得する契約を締結していれば、Cと売買契約を締結することができる。

【じっくり解説】

ちょっとマイナーな感じの問題ですが、マイナーであるがゆえに、ちゃんと理解せずに済ましているところだと思います。この問題の理解を通して、制度自体の趣旨を確認してもらたいということで解説します。

宅地建物取引業者が自ら売主の場合の「自己の所有に属しない物件の売買契約締結の制限」には、所有者と取得契約を締結している場合以外にも、「その他宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得できることが明らかな場合」には、例外的に売買契約を締結してよいという例外があります。つまり、売主である宅地建物取引業者が取得契約を締結している場合以外でも、宅地建物取引業者が物件を取得できることが確実であるならば、買主である宅建業者でない者も、物件を取得できる可能性が高いので、売買契約を締結してよいというわけです。

それはどのような場合かについて、いくつか宅地建物取引業法施行規則に規定がありますが、ここでは、保留地予定地に関する規定を見ておきましょう。

「当該宅地が土地区画整理法の規定により土地区画整理事業の施行者の管理する土地(「保留地予定地」という。)である場合において、当該宅地建物取引業者が、当該土地区画整理事業に係る換地処分の公告の日の翌日に当該施行者が取得する当該保留地予定地である宅地を当該施行者から取得する契約を締結しているとき。」

難しい条文です。しかも、これは土地区画整理法の理解が必要ですが、下図を見て下さい。

今、土地区画整理事業が施行されている区域内のDという人が所有している土地があったとします。ここが保留地予定地であったとします。保留地というのは、土地区画整理法に出てきますが、換地処分がなされると最終的に施行者が取得することになっています。そして、施行者が保留地を取得して、それを誰かに売却してお金を得ます。そのお金で土地区画整理事業の費用等にあてるわけです。

ということは、Dから施行者Bへの所有権の移転は、土地区画整理法という法律で定められていることですから、移転は確実だ。そして、施行者Bから宅建業者Aが取得契約を締結しているなら、Aが所有権を取得するのは確実だ。それならば、買主Cは所有権を取得できるであろう。ということでAC間の売買契約を締結してもよいというのが、先ほどの条文です。

これは、単純に宅建業者Aが、施行者Bと取得契約を締結しているから、ACの売買契約が締結できるというふうに考えるのは正しくないと思います。それならば、取得契約のある場合として特別に法に規定を設ける必要はないからです。この取得契約というのは、「所有者」と締結していないと意味がありません。所有者でない者と取得契約を締結しても、確実に物件を取得できるとは言えないからです。

この土地区画整理法の場合、換地処分がなされるまでは所有者はDです。したがって、宅建業者Aは現在の所有者でない施行者Bと取得契約を締結しているわけです。しかし、施行者が保留地予定地を取得できるのは、土地区画整理法という法律で認められているので確実です。したがって、この場合は例外的に宅建業者AはCと売買契約を締結してよいという規定です。

以上より、この問題の正解は「○」ということになります。

*宅地建物取引業法33条の2第1号、同法施行規則15条の6第3号

3 誤り。宅地建物取引業法のクーリングオフの規定は、宅地建物取引業者が自ら売主の場合の制限です。本肢では、宅地建物取引業者Aは媒介業者であり、自ら売主のBは宅地建物取引業者ではありません。したがって、Cはクーリングオフすることはできない。
*宅地建物取引業法37条の2第1項

4 正しい。まず、Aは自己の所有に属しない宅地を自ら売主として売買しているが、土地区画整理事業の施行者と取得契約を締結しているので、このような売買契約も認められる。さらに、代金の額の10分の2を超える額の手附を受領することができないが、20パーセントまでの手付金は受領することができるので、この点も問題はない。さらに手付金等の保全措置も講じているので、本肢の手付金を受領することができる。
*宅地建物取引業法41条の2第1項、39条1項


【解法のポイント】肢1は、おそろしく細かい問題なので、とりあえず保留にすると思います。肢2も出題当時は、知らなかった受験生が多かったものと思われます(なんとなく勘で分かりますが…)。しかし、肢3ははっきり誤りです。したがって、正解は出せないといけない問題です。分からない肢が出てきても、それに負けてはいけません。分かる肢が1つしかなかったとしても、それが正解肢である問題は意外に多いものです。なお、肢2に関しては再度の出題の可能性もありますので、覚えておいた方がいいでしょう。