下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成7年 問45

【問 45】 宅地建物取引業者Aは、宅地の分譲を行っているテント張りの現地案内所において、宅地建物取引業者でないBから宅地の購入の申込みを受け、自ら売主として、売買代金を4,000万円とする売買契約を締結した。この場合に関する次の特約のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、有効なものはどれか。

1 「AがBに引き渡した宅地に契約不適合があったときは、Bが契約不適合を発見した時から1年半後までに契約不適合を通知すれば、Aが担保責任を負担する」旨を特約した。

2 「Aが契約の履行に着手するまでは、Bは支払い済みの手付金及び中間金を放棄して、Aはその倍額を償還して、契約を解除することができる」旨を特約した。

3 「Aから契約の解除ができる旨及びその方法について告げられた日から8日以内に、Bが契約の解除を申し入れても、既にAが宅地造成の工事を完了しているときは、手付金を返還しない」旨を特約した。

4 「Bが売買代金の支払いを履行できなかったときは、Bは、Aに対する損害賠償金として、既に支払い済の手付金200万円を充当するほか、800万円を支払う」旨を特約した。

【解答及び解説】

【問 45】 正解 1

1 有効。宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならず、これに反する特約は、無効となる。そして、民法において、買主が担保責任を追及するために契約不適合を通知すべき期間については、買主が契約不適合を発見してから1年となっているので、本肢の特約は買主に有利なものとなり、特約は有効である。
*宅地建物取引業法40条

2 無効。宅地建物取引業者が、みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手附を受領したときは、その手附がいかなる性質のものであっても、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手附を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。したがって、買主が手付金及び中間金を放棄しなければ解除できないとする特約は買主に不利であり、本肢特約は無効となる。

【じっくり解説】

この問題は、勉強を始めたばかりの方で、気になる方もいる内容ではないかと思いますし、また、他にも応用の利く問題ではないかと思います。私などは、この手の問題はちょっと気になりますが、何はともあれ、まず、問題を解いてみて下さい。

「宅地建物取引業者Aは、宅地の分譲を行っているテント張りの現地案内所において、宅地建物取引業者でないBから宅地の購入の申込みを受け、自ら売主として、売買代金を4,000万円とする売買契約を締結した。「Aが契約の履行に着手するまでは、Bは支払い済みの手付金及び中間金を放棄して、Aはその倍額を償還して、契約を解除することができる」旨を特約した。」

この問題は、ある程度勉強している人は、何の悩みもなく「×」とするでしょうし、それで正解です。

ただ本問の特約の内容を見てもらうと、「B(買主)は支払い済みの手付金及び中間金を放棄して、A(売主)はその倍額を償還して」解除できるとなっています。

このうち、「B(買主)は支払い済みの手付金及び中間金を放棄して」という部分について、買主は手付金の放棄で解除できるはずで、中間金まで放棄しなければ解除できないというのは、買主に不利な特約であり、この特約は無効=宅建業法に違反するということになります。これは、スンナリ分かる。

しかし、この特約には後半部分もあります。「A(売主)はその倍額を償還して」という部分です。ここで「その」倍額というのは、「手付金及び中間金」の倍額という意味でしょう。これは、買主にとっては、多くのお金が戻ってくるわけですから、買主に有利となります。つまり、この特約は買主に「有利」な部分と「不利」な部分が混在していることになります。しかし、試験では特約「全体」として有効か、無効かという問われ方しか見たことがあります。このような場合、解答としては特約は有効とすべきか、無効とすべきか、迷ってしまうこともあるかもしれません。

結論としては、特約の中に無効な部分があれば、その特約は「無効」と答えるようになっているようです。これは、問題全体の正解番号から推測すると、すべてそのようになっているということです。この辺は、人それぞれご意見もあろうかと思いますが、試験ではそのように解答して下さい。逆に言うと、あまり難しく考えず、「特約の中に無効な部分があれば、その特約は無効」ということで解答するということで割り切って下さい。

*宅地建物取引業法39条2項

3 無効。申込みの撤回等が行われた場合においては、宅地建物取引業者は、申込者等に対し、速やかに、買受けの申込み又は売買契約の締結に際し受領した手付金その他の金銭を返還しなければならない。これに反する特約で申込者等に不利なものは、無効となる。したがって、工事が完了していれば手付金を返還しないとする本肢特約は、申込者等に不利であり、無効である。
*宅地建物取引業法37条の2第3項

4 無効。宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の10分の2をこえることとなる定めをしてはならない。本肢では、合計1,000万円の損害賠償額の予定又は違約の定めがなされており、売買代金額の2割(800万円)を超えている。
*宅地建物取引業法38条


【解法のポイント】本問は、宅地建物取引業者が自ら売主の場合の各種の規定について、特約の効力について問うものである。この自ら売主の場合の制限の特約で、買主に有利か不利かの判断は確実にできるようにしておいて下さい。