下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成7年 問39

【問 39】 個人である宅地建物取引業者Aは、甲県に従業者(一時的な事務補助者を除く。以下同じ。)14人の本店、乙県に従業者7人の支店を有するが、支店を廃止してその従業者全員を、本店で従事させようとしている。この場合に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 免許換えにより甲県知事の免許を受けようとするときは、甲県の事務所に成年者である専任の宅地建物取引士を5人以上置く必要がある。

2 甲県知事への免許換え申請をした場合で、国土交通大臣免許の有効期間の満了後に甲県知事の免許がなされたときは、甲県知事の免許の有効期間は、従前の免許の有効期間の満了の日の翌日から起算される。

3 甲県知事から免許換えにより免許を受けた後において、乙県の区域内に15区画の一団の宅地分譲の申込みを受けるため案内所を設置しようとするときは、一定の事項を乙県知事及び甲県知事に直接届け出る必要がある。

4 甲県の事務所に移転する宅地建物取引士で、乙県知事に宅地建物取引士資格登録をしているものは、事務所移転に伴い自己の住所を甲県に移転したときには、遅滞なく、乙県知事に変更の登録申請をする必要がある。

【解答及び解説】

【問 39】 正解 2

1 正しい。支店の従業員7人が本店で業務に従事すると、本店の従業員は21人なる。事務所においては、5人に1人以上の割合で、専任の宅地建物取引士を設置しなければならないから、本店には5人の専任の宅地建物取引士が必要となる。
*宅地建物取引業法31条の3第1項、同法施行規則6条の3

2 誤り。免許換えを伴わない、通常の免許の有効期間の満了に伴う免許の更新の場合には、従前の免許の有効期間の満了の日までにその申請について処分がなされないときは、従前の免許は、有効期間の満了後もその処分がなされるまでの間は、なお効力を有し、新しい免許の有効期間は、従前の免許の有効期間の満了の日の翌日から起算するものとする、という規定がある。しかし、免許換えがなされたときは、この規定は準用されておらず、免許換えの時から起算される。

【じっくり解説】

免許換えというのは、意外に、難しい問題を含んでいます。この問題は、「○」とした人が多かったでしょうね。その根拠は、宅建業法3条4項・5項ということでしょう。

「4 免許の更新の申請があった場合において、免許の有効期間の満了の日までにその申請について処分がなされないときは、従前の免許は、有効期間の満了後もその処分がなされるまでの間は、なお効力を有する。」 「5 前項の場合において、免許の更新がなされたときは、その免許の有効期間は、従前の免許の有効期間の満了の日の翌日から起算するものとする。」

この条文は、ほとんどの宅建のテキストに載っていますので、「○」とした人が多かったと思います。しかし、上記の条文は、免許の「更新」の話ですから、同一の免許権者であることを念頭に置いています。ところが、本問は「じっくり解説」に取り上げるくらいの問題ですから、一ひねりあります。

免許の有効期間の満了と、免許換えが同時に起こっています。これについては、条文の引用の形なので、分かりにくいんですが、実は免許換えのところに条文があります。宅建業法7条2項です。本日の問題を解くのに必要な知識は、「こっち」です。

「第3条『第4項』の規定は、宅地建物取引業者が免許換えの場合において免許の申請があったときについて準用する。」

つまり、第3条の第4項は準用していますが、第5項は準用していません。言葉で書くと、免許換えの申請があった場合、免許の有効期間の満了の日までにその申請について処分がなされないときは、「従前の免許は、有効期間の満了後もその処分(=免許換え)がなされるまでの間は、なお効力を有するが、免許換え後の免許の有効期間は、従前の免許の有効期間の満了の日の翌日から起算するのではない」ということです。

それでは、いつから起算するのか?普通に、新しい免許が与えられた時からです。なぜか?免許換えというのは、以前の免許の「続き」ではなく、新しい免許権者から「新規」免許をもらうのと同様だからです。

この免許換えというのは、「免許換え」=「新規免許」と同様、という流れが何と言ってもポイントになります。つまり、免許換え後の免許は、新規免許と同様だから、「従前の免許の有効期間の満了」からではなく、新しい免許をもらってから5年の有効期間だということです。結局、本日の問題の解答は「誤り」ということになります。

*宅地建物取引業法7条2項

3 正しい。宅地建物取引業者は、あらかじめ、契約の申込みを受ける案内所等について一定の事項を免許権者及びその所在地を管轄する都道府県知事に届け出なければならない。
*宅地建物取引業法50条2項

4 正しい。宅地建物取引士の登録を受けている者は、登録を受けている事項に変更があったときは、遅滞なく、変更の登録を申請しなければならない。そして、宅地建物取引士の住所は、宅地建物取引士登録簿の記載事項であり(宅地建物取引業法18条2項)、乙県知事に変更の登録を申請しなければならない。なお、本肢は同時に登録の移転も問題になるが、登録の移転は任意である。
*宅地建物取引業法20条


【解法のポイント】肢2は難しいというのか、宅地建物取引業法の盲点をつくような問題ですよね。したがって、とりあえず保留にします。そして、肢1・肢3・肢4は問題なく「正しい」ですから、首をひねりながらでも、肢2しかないなということで肢2を正解にするということになるはずです。宅建試験の場合、自分の知っている知識と知らない知識をはっきり分け、知らないものは保留にし、知っている肢で勝負します。それでも答えが出ないときは、仕方がないので、未知の問題でも、すでに自分の持っている知識を動員して、「正解らしい」という肢に絞り込みます。この手順が大切です。漫然と、ゴチャっと勘で選んではいけません。