下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成7年 問11

【問 11】 Aには、妻B、子C・Dがあり、A及びBは、CにA所有の資産全部を相続させAの事業も承継させたいと考えているが、Cは賛成し、Dは反対している。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

1 Aは、Dが反対していることを理由として、遺言で、Dを相続人から廃除することができる。

2 Aが遺産の全部をCに遺贈した場合も、DからCに対して遺留分侵害額の請求をすれば、Cは、その部分を除外した部分を承継するほかない。

3 Dは、Aの死亡後で遺産分割前であっても、B及びCの同意を得なければ、自己の相続分を第三者に譲渡することはできない。

4 Aの死亡後、遺産分割協議をし、改めて相続人の多数決で、遺産の全部をCに承継させるしかない。

【解答及び解説】

【問 11】 正解 2

1 誤り。被相続人は、遺留分を有する推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができるが、そのためには被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加え、又は推定相続人にその他の著しい非行があったことが必要である。Cに遺産全部を相続させAの事業も承継させることに反対しているということだけでは、遺言でDを相続人から廃除することはできない。
*民法892条

2 正しい。Aの遺産の全部をCに遺贈すれば、Dの遺留分を侵害していることになり、Dから遺留分侵害額請求があれば、その部分に関して遺贈は無効となる。したがって、Cは、Dから遺留分侵害額請求があった部分を除外した部分のみしか承継することはできない。
*民法1046条

3 誤り。相続人が数人あるときは、遺産分割前は、相続財産は、その共有に属する。したがって、Dはその共有持分を他の共有者の同意を得ることなく、第三者に譲渡することができる。
*民法898条

4 誤り。遺産分割協議において、Dの意思を無視して、共同相続人の多数決で決することはできない。Dがあくまで反対する場合は、「共同相続人間に協議が調わないとき」ということになり、各共同相続人が、その分割を家庭裁判所に請求することになる。
*民法907条2項


【解法のポイント】肢2の遺留分は、宅建では頻出事項です。肢3の、相続財産は共有であるという知識も、何度か本試験で聞かれています。