下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成7年 問10

【問 10】 請負契約により注文者Aが請負人Bに建物(木造一戸建て)を建築させた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。ただし、担保責任に関する特約はないものとする。

1 建物の完成後その引渡しを受けたAは、その建物の種類又は品質に関して契約内容の不適合について、不適合を知った時から2年以内に限り、修補又は損害賠償の請求をすることができる。

2 Bが建物の材料の主要部分を自ら提供した場合は、Aが請負代金の全額を建物の完成前に支払ったときでも、特別の事情のない限り、Bは、自己の名義で所有権の保存登記をすることができる。

3 AがBから完成した建物の引渡しを受けた後、Cに対して建物を譲渡したときは、Cは、その建物の瑕疵について、Bに対し修補又は損害賠償の請求をすることができる。

4 Aは、Bが建物の建築を完了していない間にBに代えてDに請け負わせ当該建物を完成させることとする場合、損害を賠償してBとの請負契約を解除することができる。

【解答及び解説】

【問 10】 正解 4

1 誤り。請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡した場合において、注文者がその不適合を知った時から「1年」以内にその旨を請負人に「通知」しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。
*民法637条1項

2 誤り。本肢は、完成した請負契約の目的物の所有権は最初に誰に帰属するかという問題である。もし、目的物の所有権を請負人が最初に取得し、それを注文者に移転すると考えると、本肢のようにBは、まず自己の名義で所有権の保存登記をすることができることになる。しかし、判例は請負人が建物の材料の主要部分を自ら提供した場合でも、注文者が建物完成前に代金全額を支払っている場合は、特別の事情のない限り、建物完成と同時に、最初から注文者に建物の所有権が帰属するという。したがって、Bは自己の名義で所有権の保存登記をすることはできない。

3 誤り。請負契約における担保責任の追及は、注文者という契約上の地位に対して認められているものである。したがって、注文者が請負目的物を第三者に譲渡した場合、目的物の譲受人は修補又は損害賠償の請求をすることはできない。
*民法562条、564条

4 正しい。請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。この解除権については、請負人の債務不履行等の事由は特に要求されていないので、Bに代えてDに請け負わせるというような理由で、Bとの請負契約を解除してもよい。
*民法641条


【解法のテクニック】本問は、請負契約の問題ですが、肢2と肢3はかなりの難問です。この年受験された方は、知識としてこの問題に正解を出せた人は、ほとんどいないと思います。肢4は非常に基本的な条文ですので、正解を出せないといけないわけですが、ちょっと一ひねりしてあって、「Bに代えてDに請け負わせる」という事例になっているので、「そんな勝手な理由で解除していいのかな?」と思い、肢1は×、肢2は?、肢3は?、肢4が「う~ん、これでいいのかな?」という人がいたと思います。この問題に関しては、肢4の解説に書いてあるとおり、この解除権には、請負人の債務不履行等の事由は不要だということをしっかり押さえている人は、問題なく正解を出せたわけです。単なる丸暗記の人は、考え込んでしまったと思います(何も考えなかった人は問題ありませんが…)。出題者は、このような事例を出題するということは、単なる丸暗記だけではダメですよと言っているように、私には思えます。