下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成7年 問5

【問 5】 債権者代位権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 Aが妻Bに不動産を贈与した場合、Aの債権者Cは、Aの夫婦間の契約取消権を代位行使することができる。

2 DのEに対する債権の弁済期が到来していない場合、自己の債権を保全するため、Dは、裁判上の代位であってもEのFに対する債権を行使することができない。

3 土地がGからH、HからIへと譲渡された場合において、登記がなおGにあるときは、Iは、HのGに対する登記請求権を代位行使することができる。

4 Jの所有地をKが賃借している場合において、Lが不法占拠したときは、Kは、Jの所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使することができる。

【解答及び解説】

【問 5】 正解 1

1 誤り。債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。そして、本肢の夫婦間の契約取消権は、この債務者の一身に専属する権利に該当し、Cは代位行使することはできない。
*民法423条1項

2 正しい。債権者は、その債権の期限が到来しない間は、被代位権利を行使することができない。これは、裁判上の代位であっても同様である。
*民法423条2項

3 正しい。登記をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産を譲り受けた者(I)は、その譲渡人(H)が第三者(G)に対して有する登記手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは、その権利を行使することができる。
*民法423条の7

4 正しい。土地の賃借権という特定債権の保全のために、債権者代位権の転用が認められる事例である。Kは、「JのLに対する土地所有権に基づく妨害排除請求権」を代位行使できる。なお、Kは直接賃借権に基づいて妨害排除請求することもできる(民法605条の4)。
*民法423条の7参照


【解法のポイント】債権者代位権が単独で1問出題されたのは、これが初めてではないかと思います。受験生は、さぞかしビックリしただろうと思います。民法の範囲は膨大ですので、常に本問のようなことがありえます。そのときに大切なことは、知らない問題にあまり時間を使いすぎないことです。知らない問題は、いくら時間をかけても正解に近づくことはありません。時間をかけて正解を出したという人でも、その問題は知らないわけですから、まぐれです。このような偶然に期待するよりも、他の自分の知っている問題の正解率を高めるために時間を使う方がはるかに効率的です。全く知らない問題が出たときは、一応事例を読んで普通の常識で考えて、一番「正しい」又は「誤り」と思える肢を、「第一印象」(つまり時間をかけずに)で正解にした方が、時間の有効利用にもなりますし、まぐれで当たる可能性も高くなると思います(第一印象は正しいことが多い)。ただし、本問でも肢3と肢4は、再度の出題が予想されますので、しっかり押さえておいて下さい。