下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成6年 問37

【問 37】 宅地建物取引士と宅地建物取引士証に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 宅地建物取引士は、常時宅地建物取引士証を携帯して、取引の関係者から請求があったとき提示することを要し、これに違反したときは、10万円以下の過料に処せられることがある。

2 宅地建物取引士は、宅地建物取引士証を紛失した場合、その再交付がなされるまでの間であっても、宅地建物取引士証を提示することなく、重要事項説明を行ったときは、宅地建物取引士としてすべき事務を行うことを禁止されることがある。

3 宅地建物取引士は、宅地建物取引士証を他人に貸与してはならず、これに違反したときは、事務の禁止の処分を受けることがあるが、情状が特に重くても、登録を消除されることはない。

4 宅地建物取引士は、勤務先を変更したとき、宅地建物取引士証の書換え交付の申請を行わなければならない。

【解答及び解説】

【問 37】 正解 2

1 誤り。宅地建物取引士は、取引の関係者から請求があったときは、宅地建物取引士証を提示しなければならない。しかし、これに違反しても罰則の適用はない。

【じっくり解説】

こんな罰則は覚えていないので、「とりあえず『保留』で、他の肢から正解が導ければそれでよい。」という考え方でも、もちろん結構です。しかし、ここはちょっとしたコツがありますので、それを覚えておけば大変助かります。

本問は、宅地建物取引士証の「提示義務」の話ですが、「提示義務」というのは、宅地建物取引士証だけでなく、従業者証明書にもあります。

まず、宅地建物取引士証の提示義務の話ですが、どのような場合に、この宅地建物取引士証の提示義務があるかですが、以下の2つの場合です。

  1. 重要事項の説明を行うとき
  2. 取引の関係者から請求があったとき

この2つはしっかり覚えておいて下さい。2.についてですが、これは具体的に何時という決まりはないので、取引の関係者から請求があったときの一般的な提示義務です。

ここで本日の罰則の話ですが、1.の重要事項の説明の際の提示義務に違反した場合には、宅地建物取引士は「10万円以下の過料」に処せられるが、2.の取引の関係者から請求があった場合の提示義務に違反しても罰則の適用はないという点です。したがって、本日の問題は「×」ということになります。

なぜこのような違いがあるかについてですが、あくまで私の個人的な見解ですが、取引の相手方から宅地建物取引士証の提示を求められた場合の提示義務違反には罰則がないのは、これは宅地建物取引士が宅地建物取引士証を携帯していない場合も考えられるからではないかと思われます。

重要事項の説明のときは、宅地建物取引士証の提示が必ず求められているので、それを携帯せずに重要事項の説明をするのは罰則の対象となるのに対し、取引の相手方からの提示要求はいつ要求されるかわからないので、罰則まで課せられるのは酷だと考えられます。

次に、従業者証明書の提示義務についてですが、この提示義務は「取引の関係者から請求があったとき」だけが提示義務があります。そして、この従業者証明書の提示義務違反については罰則は定められていません。つまり、宅地建物取引士証の場合も、従業者証明書の場合も、「取引の関係者から請求があったとき」の提示義務については、罰則はないということですね。

以上をまとめると、

宅地建物取引士証=重要事項説明(罰則あり)+取引関係者の請求(罰則なし)
従業者証明書=取引関係者の請求(罰則なし)

ということになります。

ちなみに、重要事項の説明の際の宅地建物取引士証の提示義務違反の罰則ですが、10万円以下の過料になりますが、これは数字を含めて覚えておいた方がベターでしょう。現に次のような問題が出題されています。

【参考問題】【H25-30(2)】
「宅地建物取引業者が、宅地建物取引士をして取引の相手方に対し重要事項説明をさせる場合、当該宅地建物取引士は、取引の相手方から請求がなくても、宅地建物取引士証を相手方に提示しなければならず、提示しなかったときは、20万円以下の罰金に処せられることがある。」

これは、「20万円以下の罰金」→「10万円以下の過料」で「×」ということになります。この「10万円以下の過料」は宅建業法の罰則の中では最も軽く、かつ、宅建で出題される内容では「宅地建物取引士」に関する罰則のみになっています。

*宅地建物取引業法22条の4、79条以下

2 正しい。宅地建物取引士は、重要事項の説明をするときは、宅地建物取引業者の相手方等に対し、宅地建物取引士証を提示しなければならない。したがって、宅地建物取引士証を紛失しているときは、再交付がなされるまで、重要事項の説明をすることはできない。これに反して重要事項の説明をした場合は、事務の禁止処分がなされることがある。
*宅地建物取引業法35条4項、68条2項

3 誤り。宅地建物取引士が、他人に宅地建物取引士証を貸与することは、「他人に自己の名義の使用を許し、当該他人がその名義を使用して宅地建物取引士である旨の表示をしたとき」に該当し、事務の禁止処分を受けることがあり、情状が重ければ登録消除処分に処せられる。
*宅地建物取引業法68条1項2号、68条の2第1項4号

4 誤り。宅地建物取引士は、その氏名又は住所を変更したときは、宅地建物取引士証の書換え交付を申請しなければならない。勤務先の変更では書換え交付の申請は不要である。
*宅地建物取引業法施行規則14条の13第1項


【解法のポイント】肢1は、しっかり覚えておいた方がいいですよ。宅地建物取引士証の提示義務があるのは、1.重要事項の説明時、2.取引の関係者から請求があったときです。このうち1.の重要事項の説明時の提示義務に違反すれば10万円以下の過料になるが、2.の取引の関係者からの請求時に提示義務違反があっても、罰則はない。