下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成5年 問42

【問 42】 宅地建物取引業者の広告に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 新聞折込広告で、実際に取引する意思のない物件を分譲すると広告した場合、宅地建物取引業法に違反して、6月以下の懲役に処せられることがある。

2 一団地の住宅を数回に分けて販売する場合、最終回の分譲については、売主が明らかであるので、これを省略して広告してもさしつかえない。

3 宅地建物取引業者が宅地建物取引業法第65条第2項の規定による業務停止の処分を受けた場合、宅地建物の販売をすることはできないが、当該処分期間経過後の販売に関し、あらかじめ広告をすることはできる。

4 建売住宅の分譲について、建築確認が下りる前に「建築確認申請中」として新聞広告をした場合、宅地建物取引業法に違反して、20万円以下の罰金に処せられることがある。

【解答及び解説】

【問 42】 正解 1

1 正しい。実際に取引する意思のない物件を分譲すると広告した場合は、「おとり広告」として誇大広告に当たるが、誇大広告の禁止の規定に違反すれば、6月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又はこれを併科される。したがって、6月以下の懲役に処せられることがある。
【じっくり解説】肢4とまとめて解説しています。
*宅地建物取引業法32条、81条

2 誤り。宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借に関する広告をするときは、「取引態様の別」を明示しなければならない。一団地の住宅を数回に分けて販売する場合の最終回の分譲であっても、売主を明らかにする必要がある。
*宅地建物取引業法34条1項

3 誤り。宅地建物取引業者が行う広告も「業務」であり、業務停止処分を受けた場合、当該処分期間中は販売だけでなく「広告」をすることもできない。
*宅地建物取引業法65条2項

4 誤り。宅地建物取引業者は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる開発許可、建築確認等の処分があった後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物の売買その他の業務に関する広告をしてはならない。本肢では、建築確認が下りていないので、たとえ広告中に「建築確認申請中」と記載していても、広告の開始時期の制限の規定に違反する。しかし、この広告の開始時期の制限の規定に違反しても、指示処分に処せられることはあっても、罰則が課されることはない。

【じっくり解説】

この問題は、「この分野は得意だ!」という人がいないのではないかというくらい、厄介な範囲です。肢1・肢4の問題で、いずれも罰則について問われていますが、この宅建業法の「罰則」については、基本的に暗記モノで、これといった対策は正直ないと思います。しかも、罰則に対する知識がなければ正解が導けない問題というのは、そう多くはないので、はっきりいって「対策は取らない」というのも立派な対策だと思います。罰則を細かく覚えているヒマがあれば、もっとすることがあるはずで、その方が自分自身の試験全体の得点も上がると思います。それにもかかわらず、本日、罰則の問題を取り上げたのは、罰則の知識でも、「これくらいは覚えておいた方が得をする」というのが、いくつかありますので、その一つを取り上げたわけです。

それは、「広告」に関する罰則は「誇大広告の禁止のみ」だという点です。宅建業法では、「広告」の規制がいくつかあります。広告の開始時期の制限(契約締結時期の制限)、誇大広告の禁止、取引態様の明示です。それと、「契約締結時期の制限」は「広告の開始時期の制限」と同じような規定で、罰則についても扱いは同じなので、セットで覚えておけば、なおいいでしょう。

この4つのうちで罰則があるのは、誇大広告の禁止だけです。しかも、この誇大広告の禁止の罰則は、出題頻度が、宅建業法の罰則の中で一番多いのではないかというくらい多い。したがって、誇大広告の禁止だけは、罰則は覚えておいた方がいいんですが、それをふくらませる形で、先ほどの形で覚えるのが一番いいと思います。

そして、誇大広告の禁止の、具体的な罰則の内容は、6月以下の懲役又は100万円以下の罰金ということになりますが、この誇大広告の禁止については、この罰則の「数字」も含めて覚えておいた方がいいと思います。

最後に、まとめておきましょうか。

広告等に関する規定、つまり、広告の開始時期の制限(契約締結時期の制限)、誇大広告の禁止、取引態様の明示の中で、罰則が定められているのは「誇大広告の禁止のみ」で、6月以下の懲役又は100万円以下の罰金ということです。

これで、スッキリしたところで、本日の問題を見てみますが、

肢1は、いわゆる「おとり広告」で、誇大広告の禁止の禁止の規定に違反し、6月以下の懲役に処せられることがあるので、「○」です。

肢4は、広告の開始時期の制限で、罰則の適用がないので「×」ということになります。

*宅地建物取引業法33条、79条以下


【解法のテクニック】肢1と肢4についてですが、罰則というのは覚えるのは大変ですが、一つコツをいいますと、宅地建物取引業法には広告に関する規制が3つあります。誇大広告の禁止、広告開始時期の制限、取引態様の明示です。この中で罰則があるのは誇大広告の禁止だけです。6月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又はこれの併科です。余裕のある方は、この誇大広告の禁止の罰則の数字も覚えておいた方がいいと思います。出題の可能性が結構あります。罰則は、何年以下の懲役が、コレとコレというふうに覚えるよりも、規制内容ごとに(例えば、広告についての罰則)というように覚えた方が頭に残りやすい人が多いと思います。