下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成5年 問36

【問 36】 次の者のうち、宅地建物取引業の免許を受けることができるものはどれか。

1 A社-その取締役Bが、3年前に、刑法第233条(業務妨害)の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、その執行を終えた。

2 C社-その政令で定める使用人Dが、3年前に、土地の投機的取引に関連して、国土利用計画法第23条の届出をせず、かつ、無免許で宅地の売買を数回行っていた。

3 E社-その相談役Fが、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律により都道府県公安委員会が指定した暴力団(以下この問において「指定暴力団」という。)の構成員であり、かつ、社長GよりもE社に対する支配力が大きい。

4 H社-その取締役Iが、J社の代表取締役であったとき宅地建物取引業に関し指定暴力団の構成員に暴力的要求行為をすることを依頼したため、業務停止処分に該当し、その情状が特に重いとして、J社が1年前に宅地建物取引業の免許を取り消された。

【解答及び解説】

【問 36】 正解 1

1 免許を受けることができる。法人の役員が罰金刑を受けたときに、5年間免許を受けることができなくなるのは、傷害罪などの一定の犯罪によって罰金の刑に処せられたときに限る。業務妨害罪というのは、その一定の犯罪の中に含まれていないので、A社は免許を受けることができる。
*宅地建物取引業法5条1項3号の2、7号

2 免許を受けることができない。本肢の政令で定める使用人の行為は、「宅地建物取引業に関し不正又は著しく不当な行為をした者」に該当する(宅地建物取引業法5条1項4号)。そして、法人でその役員又は政令で定める使用人のうちにこの行為を行った者がいる場合は、法人は5年間免許を受けることができない。
*宅地建物取引業法5条1項4号、7号

3 免許を受けることができない。法人の「役員」が、指定暴力団の構成員であった場合は、「宅地建物取引業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者」に該当し、その法人は免許を受けることができないが、ここでいう「役員」とは、取締役等だけではなく、これらに準ずる者をいい、相談役、顧問、その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し取締役等に準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。したがって、相談役Fは「役員」に該当するので、E社は免許を受けることができない。
*宅地建物取引業法5条1項5号、7号

4 免許を受けることができない。J社が宅地建物取引業の免許を取り消されることによって、J社だけでなく、その取締役であるIも5年間宅地建物取引業の免許を受けることができず、そのIを「役員」とするH社も宅地建物取引業の免許を受けることができない。
*宅地建物取引業法5条1項2号、7号


【解法のポイント】これも定番の免許の基準の問題。肢1の罰金刑についてですが、一定の犯罪とは、大きく2つのグループに大別できます。その一つは、宅地建物取引業法違反です。これは宅地建物取引業の免許である以上、宅地建物取引業法に違反した人は、たとえ罰金刑でも欠格事由に該当します。2つ目は、刑法等の犯罪を犯したものです。これは、悪質な地上げ業者や暴力団が宅地建物取引業に関与することを防ぐためです。この趣旨から、暴力的な犯罪が中心になっていますが、背任罪というのも含まれています。背任罪は暴力的とは言えませんが、宅地建物取引業者は、不動産という高価な財産を取り扱う業者であるため、背任等の人の信頼を裏切る行為を行う者も排除するためです。この中で、勉強している立場から言うと、困るのが第2グループの暴力的な犯罪が、いろいろ列挙されている点です。ただ、これも以上の趣旨さえ頭に入れておけば、神経質に覚えなくても、何回か目を通しておけば大丈夫です。一点、気を付けるとすれば、これら暴力的な犯罪は、故意犯になっており「過失犯」は含まれていないことです。