下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成5年 問11

【問 11】 平成19年10月AがBのために新たに借地権を設定した場合に関する次の記述のうち、借地借家法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 借地権の存続期間は、契約で25年と定めようと、35年と定めようと、いずれの場合も30年となる。

2 「期間満了の際、AがBに対し相当の一定額の交付さえ行えば、Aは更新を拒絶できる」と特約しても、その特約は、無効である。

3 「地代の増減は、A・Bの協議によって定める」と約定した場合、Aは、協議を尽くさなければ、地代の増減を請求することはできない。

4 「借地権の設定から30年経過後に、AがBの建物を時価で買い取り、契約は更新しない」と特約しても、その特約は、無効である。

【解答及び解説】

【問 11】 正解 2

1 誤り。借地権の存続期間は、30年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。したがって、借地権の存続期間を25年と定めれば、その約定は無効となり、存続期間は30年となるが、35年と定めれば、その約定は有効で、存続期間は35年となる。
*借地借家法3条

2 正しい。Aが更新を拒絶するには、1.借地権設定者及び借地権者が土地の使用を必要とする事情のほか、2.借地に関する従前の経過、3.土地の利用状況、4.借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。これに反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする。本肢の特約は、上記4.にかかる特約である。しかし、特約が有効かどうか、すなわち正当事由が認められるかどうかは、1.から4.の事情を「総合的に判断」して決めるのであり、4.の財産上の給付(立退料)を支払うことのみをもって、正当事由を満たすような特約は、借地権者Bに不利であり、無効となる。
*借地借家法6条、9条

3 誤り。地代が、土地に対する租税その他の公課の増減により、経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。「地代の増減は、当事者の協議によって定める」と約定した場合でも、協議を尽くさなければ、地代の増減を請求することができないわけではない(判例)。
*借地借家法11条1項

4 誤り。これは建物譲渡特約付借地権で、有効である。すなわち、借地権を設定する場合において、その設定後30年以上を経過した日に借地権の目的である土地の上の建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡し、契約を更新しない旨を定めることができる。
*借地借家法24条


【解法のポイント】肢2は、たまに質問される問題ですね。確かに、立退料を支払うというのは、正当事由の有無の判断に影響を及ぼしますが、「それのみをもって」正当事由を満たすという特約が無効なんです。問題文でいうと、「交付さえ行えば」というところがダメなんです。例えば、いかに高額の立退料を支払っても、寝たきりの老人を家(及び土地)から追い出すのは不当でしょう。肢3については、判例を知らなかったら(ほとんどの受験生は知らなかったものと思われる)、判断に困った人も多かったと思いますが、こういうときは、とりあえず○か×かを即断せず、とりあえず△で保留にしておいて、「知っている肢」で勝負です。