下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成5年 問10

【問 10】 AがBから土地を賃借して、建物を建て、その登記をした後、その建物にCの抵当権を設定して、登記をしたが、Aが弁済期に履行しなかったので、Cが抵当権を実行して、Dがその建物を競落した。この場合、民法及び借地借家法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

1 Cは、抵当権を実行する際、A及びBに通知しなければならない。

2 Dは、競落により建物を取得したのであるから、土地の賃借権も当然に取得し、Bに対抗することができる。

3 Dは、土地の賃借権の譲渡についてBの承諾を得なければならず、Bが承諾しないときは、Bに対抗する手段がない。

4 BがDの土地の賃借権の譲渡を承諾しないときは、Dは、Bに対しその建物を時価で買い取るよう請求することができる。

【解答及び解説】

【問 10】 正解 4

1 誤り。Cは抵当権を実行するに際して、A、Bのどちらに対しても通知する必要はない。

2 誤り。本問の建物について抵当権が実行されると、建物の従たる権利として、土地の賃借権もDに移転する。そうすると、土地の賃借権の譲渡がなされたことになるので、原則として賃貸人Bの承諾が必要となる。したがって、DはBに対して当然に賃借権の取得を対抗できるわけではない。
*民法87条2項、民法612条1項

3 誤り。肢2の解説のとおり、Dは、賃借権を取得するには、原則としてBの承諾(民法612条1項)が必要となるが、Bの承諾が得られなければ、Bの承諾に代わる裁判所の許可を得ればよい。
*借地借家法20条

4 正しい。賃貸人が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、その第三者は、賃貸人に対し、建物を時価で買い取るべきことを請求することができる。
*借地借家法14条


【解法のポイント】肢3の「賃貸人の承諾に代わる裁判所の許可」の制度と、肢4の「建物買取請求権」の関係が分かりにくい人もいると思います。「賃貸人の承諾に代わる裁判所の許可」というのは、賃借権の譲渡の「前」に賃貸人が承諾してくれなかった場合に要求できるもので、「建物買取請求権」は、賃貸人の承諾を得ないまま賃借権の譲渡がなされてしまった「後」に、それでも賃貸人が承諾をしてくれなかった場合に、行使できるものだと考えて下さい。