下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成4年 問8

【問 8】 居住用不動産の売買契約の解除又は取消しに関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 当該不動産に隠れた瑕疵がある場合、居住の用に支障がない場合は、買主は、当該契約を解除することができない。

2 買主が支払期日に代金を支払わない場合、売主は、不動産の引渡しについて履行の提供をしなくても、催告をすれば、当該契約を解除することができる。

3 買主のローン不成立のときは契約を解除することができる旨の定めが当該契約にある場合において、ローンが不成立となったときは、売主がその事実を知っていても、買主が解除の意思表示をしない限り、契約は解除されない。

4 当該契約の締結は第三者の詐欺によるものであったとして、買主が契約を取り消した場合、買主は、まず登記の抹消手続を終えなければ、代金返還を請求することができない。

【解答及び解説】

【問 8】 正解 3

1 誤り。引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は契約を解除することができる。そして、「その契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」は、契約の解除はできないが、居住用不動産の売買契約で、居住の用に支障がないとしても、軽微な不履行とはいえないのであれば、契約を解除することもできる。
*民法564条、541条

2 誤り。債務不履行を理由に売買契約を解除するためには、「債務者が履行をしないことが違法であること」というのが要件になる。したがって、債務者が、同時履行の抗弁権を有する場合には、債務者が履行期に履行しないのは、「違法」とはならない。そこで、債権者は自ら履行の提供をし、債務者の同時履行の抗弁権を消滅させた上でないと、契約を解除することはできない。
*民法541条

3 正しい。本肢のような特約をローン条項(又はローン特約)というが、本肢の特約は、「ローン不成立のときは契約を解除することが『できる』」とされており、ローンが不成立の場合でも当然に契約が解除されるものではなく、買主が改めて解除の意思表示をしたときに、はじめて契約が解除される。したがって、買主が解除の意思表示をしない限り、解除されないとする本肢は、正しい。
*民法540条1項

4 誤り。契約が取り消された場合の、当事者の相互の返還義務については、同時履行の抗弁権が認められる(判例)。したがって、買主の登記の抹消手続と代金返還は同時履行の関係にあり、買主の登記の抹消手続に先履行が要求されるものではない。
*民法533条


【解法のポイント】肢3のローン条項についてですが、このローン条項には、解除条件型と解除権留保型の2種類があります。解除条件型は、「ローン不成立のときに契約は解除『される』」というふうに、特別に解除の意思表示をしなくても、当然に契約が解除されるものである。それに対して、解除権留保型は、「ローン不成立のときに契約を解除することが『できる』」というもので、ローン不成立の場合であっても、当然に契約が解除されるのではなく、契約が解除されるためには、買主の解除の意思表示を改めて必要とするものである。