下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成3年 問43

【問 43】 Aは、平成19年1月8日に宅地建物取引業の免許を受け、同年2月8日にBに宅地を売却し、同年3月8日に営業保証金を供託した旨の届出をし、同年4月8日にCに宅地を売却し、同年5月8日に宅地建物取引業保証協会の社員となり、同年6月8日にDに宅地を売却し、同年7月8日に営業保証金供託済の届出前に事業を開始し、その情状が特に重いとして宅地建物取引業の免許を取り消された。この場合において、Aとの取引により生じた債権について、宅地建物取引業保証協会が供託した弁済業務保証金から弁済を受ける権利を有する者をすべて掲げているものは、次の記述のうちどれか。

1 B・C・D
2 C・D
3 D
4 なし
【解答及び解説】

【問 43】 正解 1

「宅地建物取引業保証協会の社員」と宅地建物取引業に関し取引をした者(社員とその者が社員となる前に宅地建物取引業に関し取引をした者を含む。)は、その取引により生じた債権に関し、弁済業務保証金から弁済を受ける権利を有する。
まず、Bが還付を受けることができるかであるが、Bは、営業保証金を供した旨の届出はしていないが、宅地建物取引業の免許を受けたAと取引をしており、免許を受ければ宅地建物取引業者であるから、その宅地建物取引業者と取引した者として還付を受けることができる。
次に、Cについてであるが、「社員とその者が社員となる前に宅地建物取引業に関し取引をした者」も弁済業務保証金から還付を受けることができる。
最後にDであるが、DはAが保証協会の社員となった後に、宅地建物取引業に関して取引した者であり、問題なく還付を受けることができる。
以上より、B・C・Dともに還付を受けることができるので、肢1が正解となる。
*宅地建物取引業法64条の8第1項

【じっくり解説】

まず、問題文を時系列で整理してみましょう。
1月8日…Aが免許取得
  2月8日…A→Bに宅地を売却
3月8日…営業保証金を供託した旨の届出
  4月8日…A→Cに宅地を売却
5月8日…保証協会の社員
  6月8日…A→Dに宅地を売却
7月8日…免許取消

このような状況の中でB・C・Dが弁済業務保証金から還付を受けることができるかが問題です。この問題のキモは「B」だと思います。これは、考え込みます。ということで、Bから見ていきましょう。

Bは2月8日にAと宅地の売買契約を締結していますが、これはAが自ら売主として売却したものであり、「宅地建物取引業」に関する取引であるという点については問題ありません。しかし、還付を受けることができるのでしょうか?

還付を受けることができる者は、宅建業法27条1項によると、「宅地建物取引業者」と宅地建物取引業に関し取引をした者となっています。これは弁済業務保証金の還付も、条文の表現は異なるとはいえ同様です。

考え込んでしまうのは、Aが営業保証金を供託して旨の届出(3月8日)をする前に、売買契約を締結している点です。これは、本来ダメです。事業の開始は、あくまで営業保証金を供託して旨の届出からでないといけません(宅建業法25条5項)。いわば、Aのフライングです。このような業法上禁止されている取引によってなされた場合でも、その相手方は還付を受けることができるのかです。結論としては、「できる」ということです。

先ほど、還付を受けることができる者は、「宅地建物取引業者」と宅地建物取引業に関し取引をした者と書きましたが、それでは、「宅地建物取引業者」の定義はどうだったかというと、「免許を受けて宅地建物取引業を営む者」(宅建業法2条3号)とされています。それ以上のことは要求されていません。つまり、営業保証金の供託の届出をしていなくても、免許を受けていれば、定義上は「宅地建物取引業者」です。したがって、Bは「宅地建物取引業者」と宅地建物取引業に関し取引をした者であることに違いはありませんので、還付を受けることができるということになります。

実質的に考えても、A→B売買契約で、悪いこと(営業保証金の届出前の事業)をしているのはAであって、Bは何も悪いことはしていません。還付を受けることができないとすると、Aが悪いことをしたにもかかわらず、そのツケはBが払うことになります。これはやはりおかしいと思います。

次に、Bについては、もう一つ問題がありますが、これは典型的な論点です。Bは、Aが保証協会の社員となる(5月8日)前に取引をした者であるが、このような者でも、「弁済業務保証金」から還付を受けることができるのかということですが、これはみなさん、ご存知ですよね。これは還付を受けることができます。弁済業務保証金の還付を受けることができるのは、「社員とその者が社員となる前に宅地建物取引業に関し取引をした者を含む」とされているからです。つまり、Bは、上記の2つの点をクリアしているので、還付を受けることができるということになります。

このBについてしっかり理解できていれば、C・Dは簡単です。Cは保証協会の社員となる前の取引だが、還付を受けることができる。

Dは、保証協会の社員となった後の取引だから、当然に還付を受けることができる、ということになります。

したがって、本問の正解は「B・C・D」が還付を受けることができるので、正解は肢1ということになります。