下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成3年 問39

【問 39】 次に掲げる会社のうち、宅地建物取引業の免許を受けることができるものは、いくつあるか。

ア A社-その政令で定める使用人Bが、2年前にC社が破産を理由に宅地建物取引業の免許を取り消された当時、C社の取締役であった。

イ D社-その代表取締役Eが、1年前に業務上過失致傷の罪により罰金10万円の刑に処せられた。

ウ F社-その取締役Gが、3年前に詐欺の罪により懲役1年の刑に処せられた。

エ H社-その取締役Iが、横領の罪により懲役1年、執行猶予2年の刑に処せられ、執行猶予期間が満了してから1年を経過した。

1 なし
2 一つ
3 二つ
4 三つ
【解答及び解説】

【問 39】 正解 4

ア 免許を受けることができる。法人でその政令で定める使用人が、「不正の手段により免許を取得」した、「業務停止処分事由に該当し情状が重い」、「業務停止処分に違反」したとして免許を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない場合は、その法人は免許を受けることができないが、破産を理由として免許を取り消された場合は、5年を待たず免許を受けることができる。
*宅地建物取引業法5条1項2号・7号

イ 免許を受けることができる。法人でその役員が、「一定の犯罪」を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない場合、免許を受けることができないが、この「一定の犯罪」の中に業務上過失致傷罪というのは含まれていないので、当該法人は免許を受けることができる。

【じっくり解説】

まあ、オーソドックスな問題で、解答は「○」となります。刑罰を受けた者が、免許の欠格事由に該当するパターンとしては、「禁錮以上の刑」を受けた場合と、「罰金刑」を受けた場合に分かれますが、「禁錮以上の刑」を受けた場合は、その犯した犯罪は限定されず、どんな犯罪であれ、禁錮以上の刑に処せられれば、5年間は免許を受けることができません。

ところが、罰金刑の場合は、犯した犯罪が限定されます。つまり、「一定の犯罪」を犯して罰金刑に処せられた場合だけ、5年間は免許を受けることができないことになります。その「一定の犯罪」というのは、宅建業法5条1項3号の2に記載されています。

  • この法律(宅建業法のこと)
  • 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定
  • 刑法第204条(傷害罪)、第206条(現場助勢罪)、第208条(暴行罪)、第208条の3(凶器準備集合及び結集罪)、第222条(脅迫罪)若しくは第247条(背任罪)の罪
  • 暴力行為等処罰に関する法律の罪

この規定の趣旨は、暴力団関係者等に、宅建業法の免許を与えないということですが、この個々の犯罪自体は、それほど神経質に覚える必要はないと思いますが、ちょっと気を付けて欲しいのは、特に刑法に関する部分です。これらの犯罪は、すべて故意犯です。過失犯というのは、含まれていません。過失犯というのは、普通の人でも犯すことがあります。これは、過失犯で罰金という場合も、欠格事由にすると、暴力団関係者等を排除するという趣旨からは、「行き過ぎだ」ということだと思われます。

したがって、本日の問題の「業務上過失致傷の罪により罰金」というのは欠格事由に該当しないわけです。

*宅地建物取引業法5条1項3号の2・7号

ウ 免許を受けることができない。法人でその役員が、禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない場合、その法人は免許を受けることができない。
*宅地建物取引業法5条1項3号・7号

エ 免許を受けることができる。法人でその役員が、執行猶予付きの刑に処せられた場合、執行猶予期間が満了すれば、「刑の言い渡しは効力を失う」ので、執行猶予期間満了の日の翌日から免許を受けることができる。
*宅地建物取引業法5条1項3号・7号


以上より、免許を受けることができるのは、アとイとエの3つであり、正解は4となる。

【解法のテクニック】本問の免許の基準は、非常に、非常に重要です。まず、免許の基準自体が毎年のように本試験に出題されます。それだけでなく、宅建業者の免許の基準をしっかり押さえておけば、宅建業者の免許の取消事由や、宅地建物取引士の登録の基準は、似たようなものがたくさん出てきますので勉強しやすくなります。