下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成3年 問12

【問 12】 平成24年10月にAがBの所有地を賃借して居住用の家屋を所有している場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

1 Aは、家屋が火災により滅失したときは、新築することができ、その建物が借地権の残存期間を超えて存続するものであっても、Bは異議を述べることができない。

2 Aは、家屋と借地権を他に譲渡しようとするときは、Bの承諾又はこれに代わる裁判所の許可を得なければならない。

3 Aは、借地権が消滅した場合において、家屋があるときは、自らが債務不履行のときでも、Bに対し家屋の買取りを請求することができる。

4 Bは、弁済期が到来した地代等のうち最後の1年分についてのみ、Aの家屋の上に先取特権を有する。

【解答及び解説】

【問 12】 正解 2

1 誤り。まず、AはBより土地を賃借しているわけであるから、当初約定した存続期間(最低30年間)は土地を賃借する権利があり、その土地上に建物を再築することについては、地主であるBの承諾は不要である。このように建物の再築自体はAの自由であるが、再築にあたって地主の承諾を得ていれば、借地権は、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から20年間存続し、存続期間が延長されるというメリットが与えられる。ただ、この再築について地主が承諾を強要されるということはなく(すなわち異議を述べることができる)、異議を述べれば先ほどの存続期間延長という措置はとられず、当初の存続期間が終了した段階で、借主に正当事由があるかどうかで契約が更新されるかどうかが決まる。
*借地借家法7条1項

2 正しい。賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡すことができない。ただ、この賃貸人の承諾がなくても、借地借家法で、借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得しても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。したがって、Aとしては、家屋及び借地権を他に譲渡するには、Bの承諾又はこれに代わる裁判所の許可がなければならない。
*民法612条1項、借地借家法19条1項

3 誤り。借地権の「存続期間が満了」した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物を時価で買い取るべきことを請求することができる。ただ、賃借人に債務不履行があるときには、この建物買取請求を行使することができない、というのが判例である。
*借地借家法13条1項

4 誤り。借地権設定者は、弁済期の到来した最後の「2年」分の地代等について、借地権者がその土地において所有する建物の上に先取特権を有する。最後の1年分ではない。

【じっくり解説】

本問の解答に必要な条文は、借地借家法12条1項です。

借地借家法12条1項(借地権設定者の先取特権)
「借地権設定者は、弁済期の到来した最後の2年分の地代等について、借地権者がその土地において所有する建物の上に先取特権を有する。」

ということで、本問の解答は「1年」→「2年」となりますので、「誤り」ということになります。

単純に、最後の「2年」分の地代等について、先取特権があるんだ、ということで覚えておくということでもいいのではないかと思います。

ただ、一応の解説も必要だと思いますので、解説しておきましょう。

もともと、借地借家法の対象にしている土地や建物については、民法312条~316条の「不動産賃貸の先取特権」ということで、不動産の賃料については先取特権が認められています。

そうであれば、借地借家法のこの規定は不要ではないか?となりそうなんですが、そうではありません。

民法の規定は、先取特権の目的物として賃借人の「動産」のみを対象としています。

それでは不十分だということで、借地借家法12条は「借地権者がその土地において所有する建物」についても先取特権を認めたことに意味があります。

そして、本問の解答のポイントとなっている「2年」についてですが、被担保債権として「弁済期の到来した最後の2年分の地代等」に制限している理由は、抵当権の場合の被担保債権の利息は最後の2年分だけ抵当権の行使を認めるという民法375条と同趣旨だと考えられています。つまり、被担保債権が大きくなると他の債権者を害するということです。

ということは、抵当権の被担保債権の利息の場合と同様、他に債権者が存在しなければ、最後の2年分というような制限はなくなるということです。

ということで、本条の「2年」の覚え方は、抵当権の被担保債権の利息と同じ、と覚えておけばいいわけです。

*借地借家法12条1項


【解法のポイント】肢1については、いい問題だと思います。単に条文を暗記しているかどうかだけを聞いているのではなく、ちゃんとその条文を理解しているかどうかが問われます。解説文のようにしっかりと理解しておいて下さい。また、肢4は非常に細かい知識で、あまり試験などでは見かけない条文ですが、これが分からなくても、肢2をしっかり押さえていれば正解は出せます。