下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成2年 問44

【問 44】 次に掲げる宅地建物取引業者のうち、宅地建物取引業法に基づく監督処分の対象となることがないものは、いくつあるか。

ア その取締役甲が、団地造成の用地交渉で土地所有者に傷害を与え、刑法第204条の罪(傷害罪)を犯したとして、罰金の刑に処せられた宅地建物取引業者A社

イ その取締役乙が、乙の所有地の売却に伴う譲渡所得について脱税し、所得税法に違反したとして、罰金の刑に処せられた宅地建物取引業者B社

ウ 分譲マンションの建築確認を受けず、かつ、再三特定行政庁の工事施工停止命令に従わず、建築基準法に違反したとして、罰金の刑に処せられた宅地建物取引業者C

エ 団地造成の許認可の便宜を図ってもらうため、賄賂を供与し、刑法第198条の罪(贈賄罪)を犯したとして、罰金の刑に処せられた宅地建物取引業者D

1 なし
2 一つ
3 二つ
4 三つ
【解答及び解説】

【問 44】 正解 2

ア 監督処分の対象となる。宅地建物取引業者が法人である場合において、その役員又は政令で定める使用人のうちに一定の免許の欠格事由に該当する者があるに至ったときは、宅地建物取引業者は免許取消処分を受ける。したがって、傷害罪を犯し罰金刑に処せられた場合は、当該宅地建物取引業者は免許取消処分を受ける。
*宅地建物取引業法66条1項3号

イ 監督処分の対象となることはない。宅地建物取引業者が、その「業務に関し他の法令」に違反し、宅地建物取引業者として不適当であると認められるときは、免許権者は、当該宅地建物取引業者に対して指示処分をすることができる。本肢では、「乙」個人の所有地の売却であるから、「業務」に関するものとはいえず、指示処分又は業務停止処分を受けることはない。
*宅地建物取引業法65条1項3号

ウ 監督処分の対象となることがある。本肢は、イ肢と異なり、分譲マンションの建築確認等という「業務」に関して、建築基準法という「他の法令」に違反している事例です。したがって、宅地建物取引業者として不適当と認められれば、指示処分又は業務停止処分に処せられる可能性がある。
*宅地建物取引業法65条1項3号・2項1号の2

エ 監督処分の対象となることがある。本肢は、ウ肢と同様、団地造成という「業務」に関して、刑法という「他の法令」に違反する場合であり、指示処分又は業務停止処分に処せられることがある。
*宅地建物取引業法65条1項3号・2項1号の2


以上より、「監督処分の対象となることがない」ものは、イの一つであり、正解は2となる。

【解法のポイント】この問題はあまりポピュラーではない条文に関する問題で、出題当時の受験生は手も足も出なかった人がほとんどだったと思われます。しかし、一度出題されているわけですから、本問を通じて「業務」に関してという要件をしっかり確認しておいて下さい。