下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。
宅建 過去問解説 平成1年 問9
【問 9】 A所有の家屋につき、Aを売主、Bを買主とする売買契約が成立した。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
1 家屋の所有権移転登記後、引渡し前に、その家屋が天災によって滅失した場合、BはAからの代金の請求を拒むことができない。
2 家屋の所有権移転登記後、引渡し前に、その家屋が放火によって半焼した場合、Bは、Aに対し代金の減額を請求することができない。
3 家屋の所有権移転登記後、引渡し前に、その家屋がAの失火によって焼失した場合、その契約は失効する。
4 家屋の所有権移転登記が完了し、引渡し期日が過ぎたのに、Aがその引渡しをしないでいたところ、その家屋が類焼によって滅失した場合、Bは、契約を解除することができる。
【解答及び解説】
【問 9】 正解 4
1 誤り。当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者(B)は、反対給付の履行を拒むことができる。
*民法536条1項
2 誤り。引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。本肢では、売買契約成立後、引渡し前に家屋が半焼しているが、危険が移転するのは、引渡し時であり、本肢では代金減額請求をすることができる。
*民法534条1項
3 誤り。債務者の責に帰すべき事由により、債務を履行することができない場合は、債務不履行であり、契約が失効するわけではない。債務不履行の場合、契約は存続し、有効に成立した契約を買主が解除するか、又は引渡債務は損害賠償請求権に変じ、買主が損害賠償を請求することができる。
*民法415条
4 正しい。本肢では、売主は引渡し期日を徒過しており、債務不履行の一種である履行遅滞に陥っている。履行遅滞中は、不可抗力で履行をすることができない場合でも、債務者の責に帰すべき事由とされ、売主は債務不履行の責任を免れることはできない(判例)。
*民法413条の2
【解法のテクニック】肢4の「類焼」という言葉ですが、これは他から火が燃え移ってくることをいいます。したがって、「類焼」という言葉で、債務者は焼失について責任がないということを意味します。