下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。
宅建 過去問解説 平成1年 問2
【問 2】 Aは、Bに対し金銭債権を有しているが、支払期日を過ぎてもBが支払いをしないので、消滅時効が完成する前に、Bに対して、支払いを求める訴えを提起した。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。なお、この金銭債権の消滅時効期間は、5年とする。
1 AのBに対する勝訴判決が確定した場合、時効は新たに進行を開始し、その時効期間は10年となる。
2 訴えの提起前6月以内に、AがBに債務の履行の催告をしても、時効の完成が猶予されるのは、訴えを提起したときである。
3 Aが訴えを取り下げた場合、Aの金銭債権は、Aがその取下げをした日から5年間権利を行使しないとき、消滅する。
4 BがAに対する債権を有する場合において、その債権が既に時効により消滅しているときは、その時効完成前にAの金銭債権と相殺し得る状態にあったとしても、Bは、相殺することはできない。
【解答及び解説】
【問 2】 正解 1
1 正しい。AがBに対して訴えを提起することにより時効の完成が猶予されるが、勝訴判決が確定することにより、Aは権利を行使することができるのであるから、時効は新たに進行を開始する。そして、確定判決によって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年となるので、この金銭債権の消滅時効期間は10年となる。
*民法147条2項、169条1項
2 誤り。催告があったときは、その時から6ヶ月を経過するまでの間は、時効の完成は猶予される。このように催告自体に時効の完成猶予の効果があるのであり、訴えを提起する前の催告の時点で時効の完成が猶予される。
*民法150条1項
3 誤り。裁判上の請求は、訴えの却下又は取下げの場合には、時効の更新の効力を生じないので、訴えの取り下げをした日からではなく、当初に時効の進行の開始を始めたとき、すなわち支払い期日から5年で時効消滅する。
*民法147条1項
4 誤り。時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができるので、BのAに対する債権が時効消滅していても、Bは相殺することができる。
*民法508条
【解法のポイント】時効に関するオーソドックスな問題。時効は一定の割合でコンスタントに出題される分野です。