下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 令和5年 問5

【動画解説】法律 辻説法

【問 5】 AとBはいずれも甲マンションの区分所有者である。Aが、塔屋及び外壁(いずれも共用部分である。)と自ら所有する専有部分とをあわせて第三者に賃貸して賃料を得ている場合において、Bが、Aに対して、塔屋及び外壁のうち、自らの持分割合に相当する部分について不当利得の返還請求権を行使できるかどうか等に関する次の記述のうち、判例によれば、誤っているものはどれか。なお、甲マンションの規約には、管理者が共用部分の管理を行い、共用部分を特定の区分所有者に無償で使用させることができる旨の定めがあるものとする。

1 区分所有者全員の共有に属する共用部分を第三者に賃貸することは、共用部分の管理に関する事項に当たる。

2 一部の区分所有者が共用部分を第三者に賃貸して得た賃料のうち各区分所有者の持分割合に相当する部分につき生ずる不当利得返還請求権は、各区分所有者に帰属する。

3 区分所有者の団体は、区分所有者の団体のみが各区分所有者の持分割合に相当する部分につき生ずる不当利得返還請求権を行使することができる旨を集会で決議することはできない。

4 甲マンションの規約の定めは、区分所有者の団体のみが各区分所有者の持分割合に相当する部分につき生ずる不当利得返還請求権を行使することができる旨を含むものと解することができる。

【解答及び解説】

【問 5】 正解 3

1 正しい。共用部分を第三者に賃貸することは共用部分の管理に関する事項に当たる(最判平27.9.18)。
*区分所有法18条1項

2 正しい。一部の区分所有者が共用部分を第三者に賃貸して得た賃料のうち各区分所有者の持分割合に相当する部分につき生ずる不当利得返還請求権は各区分所有者に帰属する(最判平27.9.18)。
*民法703条

3 誤り。本問の不当利得返還請求権は、共用部分の第三者に対する賃貸による収益を得ることができなかったという区分所有者の損失を回復するためのものであるから、共用部分の管理と密接に関連するものであるといえる。そうすると、区分所有者の団体は、区分所有者の団体のみが上記請求権を行使することができる旨を集会で決議し、又は規約で定めることができるものと解される(最判平27.9.18)。

4 正しい。本問の不当利得返還請求権は、共用部分の管理と密接に関連するものであるといえる。そして、共用部分の管理を団体的規制に服させている区分所有法の趣旨に照らすと、区分所有者の団体の執行機関である管理者が共用部分の管理を行い、共用部分を使用させることができる旨の集会の決議又は規約の定めがある場合には、上記の集会の決議又は規約の定めは、区分所有者の団体のみが上記請求権を行使することができる旨を含むものと解される(最判平27.9.18)。


【解法のポイント】この問題は難しかったでしょうね。肢2と肢4は両立しない感じがするので、どちらかが答えのような気がしますが、肢3も「誤り」みたいな感じなので、肢3も候補になります。この肢2と肢4の関係は、分かりにくいところですが、賃料に対する不当利得返還請求権は、各区分所有者に「帰属」するが、マンションの共用部分の管理という特殊性から、この権利は団体的規制に服しているので、区分所有者の団体(管理組合)のみが「行使」することができるという意味です。