下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 令和4年 問9

【動画解説】法律 辻説法

【問 9】 マンションにおいて共同の利益に反する行為(この問いにおいて「義務違反行為」という。)を行う者に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。

ア 区分所有者及び議決権の過半数による集会の決議があれば、義務違反行為を行う区分所有者に対し、他の区分所有者の全員が訴えをもって当該義務違反行為の停止を請求することができる。

イ 区分所有者及び議決権の各3分の2以上の多数による集会の決議があれば、義務違反行為を行う区分所有者に対し、他の区分所有者の全員が訴えをもって当該区分所有者の専有部分の使用の禁止を請求することができる。

ウ 区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議があれば、義務違反行為を行う区分所有者に対し、他の区分所有者の全員が訴えをもって当該区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。

エ 義務違反行為を行う占有者に対し、当該占有者が占有する専有部分の区分所有者以外の区分所有者の全員が訴えをもって当該占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求する場合、あらかじめ集会において当該占有者に弁明の機会を与えなければならない。

1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ

【解答及び解説】

【問 9】 正解 2及び3

ア 正しい。区分所有者が義務違反行為をした場合には、他の区分所有者の全員は、区分所有者の共同の利益のため、当該区分所有者に対し、その行為の停止を請求することができる。これに基づき訴訟を提起するには、集会の決議(区分所有者及び議決権の過半数)によらなければならない。
*区分所有法57条2項

イ 誤り。区分所有者が義務違反行為をした場合には、他の区分所有者の全員は、当該区分所有者に対し、集会の決議に基づき、訴えをもって、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる。この決議は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数でする。
*区分所有法58条2項

ウ 正しい。区分所有者が義務違反行為をした場合には、他の区分所有者の全員は、当該区分所有者に対し、集会の決議に基づき、訴えをもって、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。この決議は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数でする。
*区分所有法59条2項

エ 不明。占有者が義務違反行為をした場合には、区分所有者の全員は、当該占有者に対し、集会の決議に基づき、訴えをもって、当該行為に係る占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求することができる。この決議をするには、あらかじめ、当該占有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。
*区分所有法60条2項


【解法のポイント】この問題は、合格発表時の正解番号の公表時に「問9については、正誤の判定が不明瞭な選択肢があったことから、2又は3を正解として取り扱うことといたします。」とされています。この「正誤の判定が不明瞭な選択肢」というのは、まずエで間違いないと思います。エの弁明の機会について、問題文では「あらかじめ集会において」となっています。しかし、この弁明の機会を「集会」で与えなければならないのか、別の機会でもよいのかについては、条文上はっきりしないだけでなく、それに関する判例もないと思いますので、どちらともいえないということなのだと思います。集会の場で弁明の機会を与えることが望ましいとは思いますが、それ以外の機会では絶対ダメといえるのかどうかははっきりしません。