下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。
マンション管理士 過去問解説 令和4年 問4
【問 4】 甲マンションにおける管理者が区分所有者Aである場合の管理者の立場等に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法(明治29年法律第89号)の規定によれば、正しいものはどれか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。
1 Aは、集会の決議を経ることなく、共用部分の保存行為をするとともにその形状又は効用の著しい変更を伴わない変更をすることができる。
2 Aは、甲マンションの大規模修繕工事について、自己の利益を図る目的で請負契約を締結して工事代金を支払ったとしても、当該契約が集会の決議に基づき締結したものであれば、善良な管理者の注意義務違反を問われることはない。
3 Aは、規約又は集会の決議により、その職務に関し、区分所有者のために原告となることができるが、その場合には、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。
4 甲マンションの敷地が、区分所有者の共有又は準共有に属しない場合、Aは甲マンションの敷地に関して、これを保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権限を有する。
【解答及び解説】
【問 4】 正解なし
1 誤り。管理者は、共用部分並びに建物の敷地及び附属施設を「保存」し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。したがって、保存行為を行うことはできるが、その形状又は効用の著しい変更を伴わない変更(軽微変更)は行うことはできない。なお、Aは区分所有者であるが、保存行為は、各共有者がすることができる。しかし、軽微変更は、集会の決議で決する必要があるので、区分所有者の立場としても、軽微変更をすることはできない。
*区分所有法26条1項
2 誤り。区分所有法及び規約に定めるもののほか、管理者の権利義務は、委任に関する規定に従うので、管理者は善良な管理者の注意をもって職務を行う必要がある。本肢では、自己の利益を図る目的で請負契約を締結しているので、善管注意義務に違反しているものと認められ、当該契約が集会の決議に基づき締結したものであったとしても、同様である。
*区分所有法28条
3 誤り。管理者は、規約又は集会の決議により、その職務に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。そして、「規約」により原告又は被告となったときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。しかし、「集会の決議」により原告又は被告となったときは、区分所有者に対する通知は不要である。
*区分所有法26条5項
4 誤り。管理者は、共用部分並びに区分所有者の共有又は準共有に「属する」場合における当該建物の敷地及び附属施設を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。敷地が、区分所有者の共有又は準共有に属しない場合には、これらの権限はない。
*区分所有法26条1項
【解法のポイント】この問題は、合格発表時に「正解なし」と公表されています。肢4は、結構細かい内容だと思います。