下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 令和2年 問31

【問 31】 災害や感染症拡大の影響などで管理組合の運営が困難となっている場合における次の記述のうち、区分所有法の規定及び標準管理規約によれば、適切でないものはどれか。

1 共用部分の応急的な修繕工事が必要となった場合、理事会も開催できないようなときには、理事長が単独の判断で工事を実施することができる旨を、規約で定めることができる。

2 書面又は電磁的方法により理事全員の同意を得れば、理事長は、管理費等を長期にわたって滞納している区分所有者に対し、区分所有法第59条に基づき区分所有権及び敷地権に係る競売を申し立てることができる。

3 任期の満了により退任する役員は、総会が開催されて新役員が就任するまでの間は、引き続きその職務を行うことになる。

4 災害避難により連絡がつかない区分所有者Aの専有部分内で漏水事故が発生し、至急対応しなければ階下の専有部分等に重大な影響が生じるおそれがあるときは、理事長は、Aの専有部分内に立ち入ることができる。

【解答及び解説】

【問 31】 正解 2

1 適切。災害等の緊急時において、保存行為を超える応急的な修繕行為の実施が必要であるが、総会の開催が困難である場合には、理事会においてその実施を決定することができることとしている(標準管理規約54条1項10号)。しかし、大規模な災害や突発的な被災では、理事会の開催も困難な場合があることから、そのような場合には、保存行為に限らず、応急的な修繕行為の実施まで理事長単独で判断し実施することができる旨を、規約において定めることも考えられる。
*標準管理規約21条関係コメント⑩

2 不適切。区分所有者が共同の利益に反する行為をした場合には、「集会の決議」に基づき、訴えをもって、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。理事全員の同意があるからといって、このような競売の請求をすることはできない。
*区分所有法59条1項

3 適切。任期の満了又は辞任によって退任する役員は、後任の役員が就任するまでの間引き続きその職務を行う。
*標準管理規約36条3項

4 適切。理事長は、災害、事故等が発生した場合であって、緊急に立ち入らないと共用部分等又は他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるときは、専有部分又は専用使用部分に自ら立ち入り、又は委任した者に立ち入らせることができる。
*標準管理規約23条4項


【解法のポイント】この問題は、時事的な想定がされた問題ですが、内容的には基本的なものだったと思います。ただ、このようなある一定の想定された場面で、法律の各条項を横断的に問う問題は、非常に実践的で役に立つものだと思います。