下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 令和2年 問2

【動画解説】法律 辻説法

【問 2】 甲マンション管理組合Aの組合員であるBが所有する住戸部分をCに賃貸していたところ、当該住戸の道路側の外壁タイルが自然に落下して、通行人Dが負傷した。この場合に関する次の記述のうち、民法(明治29年法律第89号)及び区分所有法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。

1 Dは、土地の工作物の設置又は保存の瑕疵によって損害を被ったとして、その工作物の共用部分の所有者である区分所有者全員に対して、その共有持分の範囲で分割債権として損害賠償請求することになる。

2 Cが、共用部分の維持管理に関与できる立場になく、損害の発生を防止するのに必要な注意を払う義務がない場合には、Dは、Cに対して損害賠償請求をすることはできない。

3 外壁タイルの落下原因が、大規模修繕工事において外壁タイル工事を実施した工事業者の施工不良にあっても、A及びAを構成する区分所有者全員が、Dに対して損害賠償責任を負うことになる。

4 甲マンションの建設当時から、建物としての基本的な安全性を欠いていることが原因である場合には、建物の建築を担った設計士、施工業者、工事監理者は、特段の事情がない限り、Dの損害について、それぞれ連帯して不法行為に基づく損害賠償責任を負うことになる。

【解答及び解説】

【問 2】 正解 1

1 誤り。土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。しかも、区分所有者全員の共同不法行為になっているので、数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が「連帯」してその損害を賠償する責任を負う。被害者が「分割」債権として損害賠償請求するのではない。
*民法717条1項、719条1項

2 正しい。土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の「占有者」は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。この「占有者」とは、工作物を事実上支配する者で、その瑕疵を修補し、損害発生を防止しうる者であるとされるので、Cはこれに該当しない。したがって、Dは、Cに対して損害賠償請求をすることはできない。
*民法717条1項

3 正しい。土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。この所有者の責任は無過失責任であり、他に原因者があっても、所有者は被害者に対して損害を賠償しなければならない。所有者は、損害を賠償した後に原因者に対して求償できるにすぎない(民法717条3項)。したがって、所有者であるA及びAを構成する区分所有者全員が、Dに対して損害賠償責任を負うことになる。
*民法717条1項

4 正しい。甲マンションの建設当時から、建物としての基本的な安全性を欠いていることが原因であれば、設計士等は被害者に対して一般的な不法行為責任を負う。そして、数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。
*民法719条1項


【解法のテクニック】問1に続いて、単純に条文そのままではなく、考えさせる問題になっています。こういうときは、焦らず「そのうちに簡単な問題も出てくる」と落ち着くことです。パニックにならないで下さい。内容的には、解説を参照して下さい。個々の知識はそんなに難しいというわけではありません。