下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 令和元年 問17

【問 17】 甲マンションの201号室の区分所有者Aが死亡し、その配偶者Bと未成年の子Cが同室の所有権を相続し、BとCが各2分の1の共有持分を有し、その旨の登記がなされている場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Bが金融機関から自己を債務者として融資を受けるに当たり、201号室の区分所有権全部について抵当権を設定しようとする場合に、Cの持分に係る抵当権の設定については、BはCのために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

2 Bが、Cに区分所有権全部を所有させるため、自己の持分を無償で譲渡する場合でも、BはCのために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

3 201号室の区分所有権全部を第三者に売却する場合、Cの持分の売却について、BはCのために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

4 201号室に係る固定資産税等の公租公課について、未成年者であるCが支払うに当たって、BはCのために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

【解答及び解説】

【問 17】 正解 1

1 正しい。親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。そして、この利益相反行為は、未成年の子の利益を保護することを目的とするので、親権者に利益となり、未成年者に不利益な行為を指す。したがって、Bが融資を受けるために、Cの持分に抵当権を設定することは、利益相反行為にあたり、特別代理人の選任が必要である。
*民法826条1項

2 誤り。親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。そして、この利益相反行為は、未成年の子の利益を保護することを目的とするので、親権者に利益となり、未成年者に不利益な行為を指す。したがって、本肢のような親権者に不利益で、子が利益を受ける場合は、利益相反行為とはならず、特別代理人の選任は不要である。
*民法826条1項

3 誤り。親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。そして、この利益相反行為は、未成年の子の利益を保護することを目的とするので、親権者に利益となり、未成年者に不利益な行為を指す。Cの持分の売却は、特に親権者に利益となるわけではないので、この利益相反行為に該当せず、特別代理人の選任は不要である。
*民法826条1項

4 誤り。親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。そして、この利益相反行為は、未成年の子の利益を保護することを目的とするので、親権者に利益となり、未成年者に不利益な行為を指す。Cが公租公課を支払う行為は、特にCに不利益となるものではなく、利益相反行為に該当せず、特別代理人の選任は不要である。
*民法826条1項


【解法のポイント】本問は、親権者と子の利益相反行為に関する特別代理人に焦点を絞った問題で、ちょっとびっくりした人が多かったのではないかと思います。しかし、事例としては、それほど分りにくいものではなく、なんとか正解を導けたのではないかと思います。