下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 令和元年 問8

【動画解説】法律 辻説法

【問 8】 甲マンションの管理組合Aの組合員Bは、101号室の区分所有権の購入に際して、C銀行から融資を受けてCのために抵当権を設定し登記を行い、また、現在は同室をDに賃貸して賃料収入を得ている。Bは極めて長期間管理費等を滞納しており、滞納額も多額となったため、Aが再三にわたり督促をしているが、Bは一切無視し続けている。この場合における次の記述のうち、区分所有法、民法、不動産登記法(平成16年法律第123号)及び民事執行法(昭和54年法律第4号)の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 B及びDは、101号室について、Cの承諾を得なくても賃借権の登記をすることができる。

2 Bの管理費等の滞納が原因で、建物の修繕に重大な支障が生じるような状況に至っている場合は、Bの滞納は、建物の管理に関し区分所有者の共同の利益に反する行為に該当する。

3 Bの区分所有権及び敷地利用権の最低売却価額で滞納管理費等を回収できる見込みがない場合でも、Aは区分所有法第59条の規定による競売を請求することができる。

4 Cが抵当権の実行として101号室を競売し、Eが当該競売における手続きを経て買受人となった場合には、Aは、Eに対して、滞納管理費等を請求することはできない。

【解答及び解説】

【問 8】 正解 4

1 正しい。抵当権が設定されていても、抵当権設定者は、目的物を使用収益することができるので、目的物に賃借権を設定することができ、そのための登記をすることができる。この登記に抵当権者の承諾は不要である。なお、賃貸人には賃借権の登記の協力義務はないが、本肢では賃貸人・賃借人の双方が登記を申請する場合であり、問題なく登記できる。
*民法369条1項

2 正しい。区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。したがって、管理費等の滞納が原因で、建物の修繕に重大な支障が生じるような場合は、共同の利益に反する行為に該当する。
*区分所有法6条1項

3 正しい。区分所有者が共同の利益に反する行為をした場合において、区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。この場合に、最低売却価額で滞納管理費等を回収できる見込みが必要であるというような要件はない。
*区分所有法59条1項

4 誤り。滞納管理費に関する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。競売に買受人も特定承継人であり、Aは、Eに対して、滞納管理費等を請求することができる。
*区分所有法8条


【解法のポイント】本問は、いろいろなことが問えそうな事例ですが、内容的には基本的なものでした。