下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 令和元年 問4

【動画解説】法律 辻説法

【問 4】 Aは、Bの所有する専有部分について、Bから賃借し、敷金を差し入れた上で、引渡しを受けてその使用を始めたが、Bが敷地利用権を有していなかったことから、専有部分の収去を請求する権利を有するCが、Bに区分所有権を時価で売り渡すべきことを請求する通知(この問いにおいて「本件通知」という。)を行った。この場合における次の記述のうち、民法及び区分所有法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。

1 本件通知の後に、AがCの承諾を得てDに対して賃借権を譲渡したときには、敷金に関するAの権利義務関係はDに承継される。

2 本件通知前にAがBに対して賃料を支払っていなかった場合、BのAに対する未払いの賃料債権は、債権譲渡がなされなければ、BからCに移転しない。

3 賃貸人の地位がBからCに移転したとしても、Cは、所有権の移転登記を経なければ、Aに対して、賃料請求をすることはできない。

4 本件通知がBに到達することによって、Bの承諾がなくても、BとCの間に専有部分及び共用部分の持分を売買対象とした売買契約成立の効果が生じることとなる。

【解答及び解説】

【問 4】 正解 1

1 誤り。賃貸人は、賃借人が適法に賃借権を譲り渡したときは、賃借人に対し敷金を返還しなければならない。したがって、敷金に関するAの権利義務関係はDに承継されない。
*民法622条の2第1項2号

2 正しい。BのAに対する未払いの賃料債権は、Bの下ですでに具体的に発生した債権であるから、これについて別途債権譲渡がなされない限り、BからCには移転しない。

3 正しい。賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
*民法605条の2第3項

4 正しい。Cが、Bに区分所有権を時価で売り渡すべきことを請求する通知は、区分所有法10条の区分所有権売渡請求権であり、これは形成権であるから、この通知をすれば、Bの承諾がなくても、専有部分を対象とした売買契約成立の効果がある。また、共用部分の持分は、その有する専有部分の処分に従うので(区分所有法15条1項)、同時に共用部分の持分にも売買契約成立の効果がある。
*区分所有法10条


【解法のポイント】本問は、区分所有法10条の区分所有権売渡請求権の事例ですが、区分所有法の内容は肢4だけで、その他は民法の賃貸借の問題です。基本的な内容なので、大丈夫だったと思います。