下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 平成30年 問15

【動画解説】法律 辻説法

【問 15】 Aが所有する甲マンションの201号室をBに賃貸した場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法(平成3年法律第90号)の規定によれば、正しいものはどれか。ただし、AB間の契約は定期建物賃貸借でないものとする。

1 AB間の契約で賃貸期間を2年と定め、A又はBが、相手方に対し、期間満了の1年前から6ヵ月前までの間に更新拒絶の通知をしなかったときは、従前と同一の賃貸期間とする契約として更新される。

2 AB間の契約で賃貸期間を10ヵ月と定めたときは、Aに借地借家法の定める正当の事由があると認められる場合には、Aは期間満了の前でもBに解約の申入れをすることができる。

3 AB間の契約で賃貸期間を60年と定めても、賃貸期間は50年とされる。

4 AB間の契約で賃貸期間を定めなかったときは、Aに借地借家法の定める正当の事由があると認められる場合には、Aの解約の申入れにより、解約の申入れの日から3ヵ月を経過した日に、契約は終了する。

【解答及び解説】

【問 15】 正解 2

1 誤り。建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
*借地借家法26条1項

2 正しい。期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなされる。したがって、賃貸期間を10ヵ月と定めた建物賃貸借は、期間の定めのない賃貸借となる。そして、期間の定めのない賃貸借においては、各当事者は、「いつでも」解約の申入れをすることができる(民法617条1項)。以上より、賃貸期間を10ヵ月と定めたとしても、結果的にAは、正当事由があれば期間満了の前でもBに解約の申入れをすることができる。
*借地借家法29条1項

3 誤り。民法上、賃貸借の存続期間は、50年を超えることができず、契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、50年とされている(民法604条1項)。しかし、この規定は、建物の賃貸借については、適用しないとされており、賃貸期間を60年と定めることもできる。
*借地借家法29条2項

4 誤り。期間の定めのない建物賃貸借において、建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から「6月」を経過することによって終了する。
*借地借家法27条1項


【解法のポイント】本問の正解肢の肢2は、なかなか考えられた問題です。建物賃貸借においては、1年未満の期間を定めることはできません。賃借人保護ということでしょう。そして、1年未満の期間を定めれば、期間の定めのない賃貸借になります。そうすると、当初の期間(本問では10ヶ月)以前であっても、賃貸借が終了する可能性が出てきて、賃借人に不利になるかもしれません。「コレ、変だな?」と考える人もいるのではないか、という狙いの問題だと思います。しかし、実際には正当事由を満たすことは困難で、正当事由を満たすというのは、よっぽどのことですから、実際には問題はないと思われます。