下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 平成28年 問33

【問 33】 組合員の管理費に滞納が生じた場合の措置又はあらかじめ規約で定めておくべき事項について、理事長から相談を受けたマンション管理士が行った次の助言のうち、標準管理規約によれば、適切でないものはどれか。

1 滞納管理費の請求に関し、規約違反を理由として法的措置を講じるときは、理事会の決議を経た上で、理事長が管理組合を代表して訴訟等を追行することになります。

2 組合員が所有している専有部分を賃貸に供し、賃貸借契約で賃借人が管理費を負担する旨規定されているときであっても、滞納管理費の請求は区分所有者に対し行います。

3 あらかじめ規約に、遅延損害金、違約金としての弁護士費用、督促などの諸費用を加算して請求することができる旨規定しているのであれば、請求しないことについて合理的事情がある場合を除き、これらについても請求すべきです。

4 規約に遅延損害金を定める場合、その利率の設定については、手間や時間コストなどの回収コストが膨大になったとしても、利息制限法や消費者契約法等における遅延損害金利率を超えることはできません。

【解答及び解説】

【問 33】 正解 4

1 適切。区分所有者等がこの「規約に違反」したとき、理事長は、理事会の決議を経て、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる。また、滞納管理費については、理事長は、未納の管理費等及び使用料の請求に関して、理事会の決議により、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる旨の規定もある(標準管理規約60条4項)。
*標準管理規約67条3項1号

2 適切。「区分所有者」は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、管理費等を管理組合に納入しなければならない。これは、賃貸借契約で賃借人が管理費を負担する旨規定されているときであっても同様である。
*標準管理規約25条1項

3 適切。組合員が期日までに納付すべき金額を納付しない場合には、管理組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる。これらの金額は、請求することが「できる」と規定しているが、これらについては、請求しないことについて合理的事情がある場合を除き、請求すべきものと考えられる。
*標準管理規約60条2項、同条コメント⑥

4 不適切。利息制限法は、金銭を目的とする消費貸借について適用されるので、滞納管理費に利息制限法の適用はない。また、消費者契約法は、消費者と事業者との間で締結される契約をいうので、管理組合と組合員の間には適用されない。したがって、滞納管理費等に係る遅延損害金の利率の水準については、手間や時間コストなどの回収コストが膨大となり得ること等から、利息制限法や消費者契約法等における遅延損害金利率よりも高く設定することも考えられる。
*利息制限法1条、消費者契約法2条3項、標準管理規約60条関係コメント④


【解法のポイント】肢1については、根拠条文は難しいところですが、問題文に「規約違反を理由として」とありますので、67条の方を挙げておきました。解説にありますように、60条4項を根拠に「適切」としてもいいでしょう。肢2と肢4は定番の問題です。肢4が正解なので、簡単な問題だったと思います。