下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 平成28年 問16

【動画解説】法律 辻説法

【問 16】 Aがその所有する甲マンションの301号室を、Bに事務所として賃貸したところ、Bの事業の執行中に従業員Cの過失により同室で火災が発生し、当該火災により、同室及びその直下のD所有の201号室にそれぞれ損害が生じた。この場合に関する次の記述のうち、民法及び失火ノ責任二関スル法律(明治32年法律第40号)の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。

1 当該火災が成年Cの重過失による場合には、BのCに対する監督についての過失の有無にかかわらず、Dは、Cに対し、損害賠償を請求することができる。

2 当該火災が18歳のCの重過失による場合において、BのCに対する監督について重過失があるときは、Dは、Bに対し、損害賠償を請求することができる。

3 当該火災が成年Cの重過失による場合には、BのCに対する監督について重過失があるときに限り、Dは、Bに対し、損害賠償を請求することができる。

4 当該火災が成年Cの重大ではない過失による場合において、BのCに対する監督について重大ではない過失があるときは、Aは、Bに対し、損害賠償を請求することができる。

【解答及び解説】

【問 16】 正解 3

1 正しい。本肢では、Cの重過失により、Dに火災による損害を与えているので、BのCに対する監督についての過失の有無にかかわらず、Dは、Cに対し、損害賠償を請求することができる。
*失火責任法

2 正しい。民法上の使用者責任において被用者の行為で失火した場合、被用者に不法行為が成立することが必要であるから、被用者に重過失が必要となる(失火責任法)。その際の使用者は選任・監督上の過失が重過失である必要はない(判例)。本肢では、使用者に重過失があるので、問題なくDは、Bに対し、損害賠償を請求することができる。
*民法715条1項

3 誤り。民法上の使用者責任において被用者の行為で失火した場合、被用者に不法行為が成立することが必要であるから、被用者に重過失が必要となる(失火責任法)。その際の使用者は選任・監督上の過失が重過失である必要はない(判例)。したがって、BのCに対する監督について重過失がなくても、軽過失があればDは、Bに対し、損害賠償を請求することができる。
*民法715条1項

4 正しい。民法上の使用者責任において被用者の行為で失火した場合、被用者に不法行為が成立することが必要であるから、被用者に重過失が必要となる(失火責任法)。したがって、本肢では、Aは、Bに対し、不法行為に基づく損害賠償を請求することができない。しかし、AはBと賃貸借契約を締結しているので、Bは履行補助者であるCの過失による火災について、債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。
*民法415条


【解法のポイント】失火責任法については、使用者責任との関係について過去問で出題されています。過去問の研究はやはり重要です。