下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 平成28年 問15

【動画解説】法律 辻説法

【問 15】 Aは、その所有する甲マンションの101号室を、敷金を24万円、月額賃料を8万円として、法人であるB社に賃貸し引き渡したが、B社が初めて1ヵ月分の賃料の支払いを失念したため、B社に対し、相当の期間を定めて1ヵ月分の賃料及びこれに対する遅延損害金の支払いを催告するとともにその支払いがない場合には契約を解除する旨の意思表示をした。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Aの催告後、当該「相当の期間」が経過しても賃料及び遅延損害金の支払いがない場合には、当然に賃貸借契約は解除される。

2 B社は支払いを怠った賃料及び遅延損害金につき、敷金から控除することをAに対し主張できる。

3 Aの催告後、「相当の期間」が経過する前に、B社が8万円をAに支払ったとき、A及びB社間において充当についての合意がなく、かつ、両者のいずれからも充当の指定がない場合には、B社の支払額は、まず遅延損害金に充当され、残額が賃料元本に充当される。

4 AとB社間の賃貸借契約において、賃料の支払いに関し、年30%の遅延損害金を定めていた場合、B社は、遅延損害金全額の支払いを免れる。

【解答及び解説】

【問 15】 正解 3

1 誤り。賃貸借契約は、当事者の信頼関係を基に成立しているので、賃貸借契約を解除するには、たとえ賃借人に債務不履行があったとしても、当事者間の信頼関係を破壊しない事情があれば、賃貸人は賃貸借契約を解除することはできない(判例)。そして、賃料の不払いについては、1ヵ月程度では当事者の信頼関係を破壊するとはいえないとされる。

2 誤り。賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しない場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
*民法622条の2第2項

3 正しい。債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。したがって、B社の支払額は、まず遅延損害金に充当され、残額が賃料元本に充当されることになる。
*民法489条1項

4 誤り。金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額(遅延損害金)は、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。ただ、この約定利率について、民法90条で暴利行為に該当する場合は、その約定利率は認められないが、年30%の遅延損害金は暴利行為には該当しないものと認められる。なお、本問は賃料に対する遅延損害金であり、金銭消費貸借ではないため、利息制限法は適用されず、賃借人は法人であるため消費者契約法の適用もない。
*民法419条1項


【解法のポイント】本問の正解肢の肢3は、ちょっと細かい規定ではありますが、それなりに有名な条文なので、しっかり押さえておいて下さい。