下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 平成28年 問14

【動画解説】法律 辻説法

【問 14】 Aが所有し、Bに賃貸し、かつ、Bが居住している甲マンションの301号室を、AがCに2,000万円で売却する契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法(平成3年法律第90号)の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

1 Cが売買契約締結時に解約手付として200万円をAに支払った後、中間金として1,000万円を支払った後でも、Aが契約の履行の着手前であれば、Cは200万円の手付を放棄して売買契約を解除し、中間金1,000万円の返還を請求することができる。

2 AとBの賃貸借契約に基づき、BからAに差し入れられた敷金の返還債務は、Bの同意がなければCに承継されない。

3 Aが、Bの承諾を得ずに、Cとの売買契約を締結したときは、AからCへの賃貸人の地位の移転をBに主張することができない。

4 Bが有益費を支出した後に、301号室の所有権移転により賃貸人がAからCに交替したときは、特段の事情のない限り、Aがその有益費の償還義務を引き続き有し、Cはその償還義務を負わない。

【解答及び解説】

【問 14】 正解 1

1 正しい。買主が売主に手付を交付したときは、相手方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し契約の解除をすることができる。買主だけが履行に着手して、売主が履行に着手していない場合は、買主は手付解除をすることができる。本肢では、買主は中間金を支払っているので履行に着手しているが、売主は履行に着手していないので、買主は手付解除をすることができる。そして、買主が手付解除をすると、手付金は放棄しなければならないが、中間金は返還されることになる。
*民法557条1項

2 誤り。賃貸借の目的物が譲渡された場合の敷金関係は、新所有者に受け継がれる(判例)。これについては、賃借人の同意を要しない。

3 誤り。賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。このときに、賃借人の承諾は不要である。
*民法605条の2第1項

4 誤り。賃借人の有益費の支出後に、賃貸借の目的物が新所有者に譲渡された場合は、有益費の償還義務は新所有者に移転する。
*民法605条の2第4項


【解法のポイント】本問は、すべて判例がらみの問題です。いずれも有名な判例ですから、しっかり確認しておいて下さい。