下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 平成28年 問10

【動画解説】法律 辻説法

【問 10】 マンション内で共同利益背反行為を行っている占有者に対して、区分所有者の全員が集会の決議により訴えを提起しようとする場合に関する次の記述のうち、区分所有法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 専有部分を賃借している占有者の共同利益背反行為による共同生活上の障害が著しく、行為の停止を求める請求によってはその障害を除去して共同生活の維持を図ることが困難であるときは、賃借人に対し、相当の期間の賃借人による専有部分の使用の禁止を請求することができる。

2 占有者が専有部分の転借人であるときに、専有部分の賃貸借契約を解除し、専有部分の引渡しを請求するためには、転貸人と転借人に加え、原賃貸人である区分所有者を共同被告として、訴えを提起しなければならない。

3 専有部分を区分所有者から賃借している占有者に対して、原告ではなく、賃貸人である区分所有者に対して専有部分を直接に引き渡すよう求めることはできない。

4 区分所有者及び区分所有者から専有部分を賃借している占有者に対して、専有部分の賃貸借契約を解除し、専有部分の引渡しを求める訴えを提起するための決議をするには、あらかじめ区分所有者に対して弁明の機会を与えなければならない。

【解答及び解説】

【問 10】 正解 3

1 誤り。専有部分の使用禁止の請求は、区分所有者に対する措置であり、占有者に対して使用禁止の請求をすることはできない。
*区分所有法58条

2 誤り。占有者が専有部分の転借人であるとき、専有部分の賃貸借契約の解除の対象となるのは、転貸借契約であり、転貸人と転借人を共同被告として訴えを提起すればよく、原賃貸人である区分所有者を共同被告とする必要はない。
*区分所有法60条

3 正しい。占有者に対する引渡し請求は、区分所有者の全員が、賃貸借契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求する制度であり、引渡しは区分所有者の全員に対してなされ、賃貸人である区分所有者に対して専有部分を直接に引き渡すよう求めることはできない。
*区分所有法60条1項

4 誤り。専有部分の賃貸借契約の解除及び専有部分の引渡しを求める訴えを提起するための集会の決議において、弁明の機会を与える必要があるのは、賃借人であり、賃貸人である区分所有者に弁明の機会を与える必要はない。
*区分所有法60条2項


【解法のポイント】肢1は、油断しているとひっかかる肢です。注意して下さい。肢2は細かい知識ですが、これを機会に覚えておいて下さい。