下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 平成27年 問12

【動画解説】法律 辻説法

【問 12】 Aは、Bとの間で、自己の所有する甲マンションの301号室をAがBに贈与する旨の贈与契約を締結した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 贈与契約が書面によってなされていない場合には、贈与契約に基づいてAからBへの301号室の所有権移転登記がなされた後であっても、Aは、贈与契約を解除して、その所有権移転登記の抹消をBに対して請求することができる。

2 Aは、301号室をBに引き渡すまでの間、善良な管理者の注意をもって同室を保存する義務までは負わず、自己の財産に対するのと同一の注意をもって同室を保存すれば足りる。

3 贈与契約の際に、Aが老人ホームに入居するための費用をBが負担する旨も併せて合意されていたにもかかわらず、Bがこの費用を支払わない場合には、Aは、相当の期間を定めてその支払義務の履行をBに催告し、その期間内に履行がなければ贈与契約を解除することができる。

4 贈与契約を締結する前から301号室には瑕疵があり、贈与契約を締結した後にこれが判明した場合には、Aは、当該瑕疵の存在を知っていたか知らなかったかにかかわらず、Bに対し、売主と同様の担保責任を負う。

【解答及び解説】

【問 12】 正解 3

1 誤り。書面によらない贈与は、各当事者が解除することができるが、履行の終わった部分については解除できない。そして、この「履行の終わった部分」というのは、不動産の場合には、登記又は引渡しがあったときだとされる(判例)。
*民法550条

2 誤り。債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる「善良な管理者の注意」をもって、その物を保存しなければならない。贈与者も特定物の引渡しの債務を負っている以上、同様である。
*民法400条

3 正しい。本肢の契約は、負担付贈与であるが、負担付贈与については、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定が準用されているので、受贈者が負担の内容を履行しない場合は、贈与者は贈与契約を解除することができる。
*民法553条

4 誤り。贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する。したがって、贈与の目的物が特定した時点の状態で引き渡せば、瑕疵があったとしても、贈与者が当該瑕疵の存在を知っていたか知らなかったかにかかわらず、原則として、債務不履行の責任を問われることはない。
*民法551条1項


【解法のポイント】本問は、贈与契約の問題としては、基本的なものだと思います。