下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。
平成26年 マンション管理士 本試験 【問 15】

【動画解説】法律 辻説法

【問 15】 Aの所有する甲マンションの301号室をAから賃借して居住しているBは、Aの承諾を得て、301号室の賃借権をCに譲渡し、301号室をCに引き渡した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 賃借権の譲渡前にBがAに対して賃料1ヵ月分を支払っていなかった場合において、賃借権の譲渡をAが承諾する際に、この未払の賃料をCにも負担させることをAB間で合意したとしても、Aは、Cに対し、その支払を請求することはできない。

2 賃借権の譲渡後、台風による暴風雨の影響で301号室の窓が破損した場合には、Cは、その修繕の請求をBに対してしなければならず、Aに対してすることはできない。

3 賃借権の譲渡後に発生する賃料について、Aは、Cに対して支払を請求することができるだけでなく、Cが無資力であるために支払えない場合には、Bに対しても支払を請求することができる。

4 BC間の賃借権譲渡契約において、Cが賃借権の譲渡の対価をBに支払うことが合意されていたにもかかわらず、Cがこれを支払わない場合には、Bは、Aの承諾を得ない限り、債務不履行を理由として賃借権譲渡契約を解除することができない。

【解答及び解説】

【問 15】 正解 1

1 正しい。賃借権の譲渡に際し、賃貸人の承諾があれば、賃借人の契約上の地位は譲受人に移転するが、延滞賃料債権については、特にこれを引き受ける契約がない限り、新賃借人に移転することはない。したがって、AB間の合意だけで、AがCに延滞賃料を請求することはできない。
*民法612条1項

2 誤り。賃借権の譲渡がなされると、従来の賃借人は賃貸借関係から離脱することになるので、賃借権の譲渡後の修繕請求をBに対して行うことはできず、Aに対してしなければならない。

3 誤り。賃借権の譲渡がなされると、従来の賃借人は賃貸借関係から離脱することになるので、賃借権の譲渡後に発生する賃料については、Aは、Cに対して支払を請求しなければならず、Bに対して支払を請求することはできない。

4 誤り。賃借権の譲渡契約は、BC間の契約であり、Cに債務不履行がある以上、Aの承諾なく、Bは賃借権の譲渡契約を解除することができる。
*民法541条


【解法のポイント】この問題は、典型的な問題ではないにしても、基本的な賃借権の譲渡の仕組みさえ分かっていれば、肢1が正解であることは比較的簡単に分かったのではないかと思います。