下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。
平成26年 マンション管理士 本試験 【問 14】

【動画解説】法律 辻説法

【問 14】 甲マンションの附属施設である立体駐車場において、A運転の自動車が、Aの運転操作ミスによって駐車場設備を破損したため、甲マンションの管理者Bは駐車場設備の修理費につき損害賠償請求をしようとしている。この場合における次の記述のうち、民法及び区分所有法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

1 事故時にAが17歳の高校生であり、友人の自動車で無免許運転をしていた場合、Bは、Aの両親であるC及びDに損害賠償請求をすることができるが、Aに損害賠償請求をすることはできない。

2 事故時にAが勤務先であるE社所有の自動車を私用で運転していた場合、Bは、Aに損害賠償請求をすることができるが、E社に損害賠償請求をすることはできない。

3 BがAに対して損害賠償請求をするに当たり、訴訟の追行を弁護士に委任した場合には、相当な修理費に加え、相当な弁護士費用を併せて請求することができる。

4 BがAに対して相当な修理費について損害賠償請求をする場合、当該債務は損害賠償を請求した時から履行遅滞になり、これに対する損害賠償を請求した日の翌日から法定利率による遅延損害金を併せて請求することができる。

【解答及び解説】

【問 14】 正解 3

1 誤り。未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。この責任能力については、12歳程度の知能が備わっていれば責任が認められるとされる。したがって、Aが17歳の高校生であれば、Aに損害賠償請求をすることができる。
*民法712条

2 誤り。使用者責任は、被用者がその「事業の執行」について第三者に損害を加えた場合に課せられるが、この「事業の執行」というのは、必ずしも被用者がその担当する業務を適正に執行する場合だけを指すのでなく、被用者の行為の外形を捉えて判断される(外形標準説)。判例には、会社の被用者が私用のため会社の自動車を運転中他人に加えた損害が「事業の執行について」生じたものとされたものもあり(最判昭39.2.4)、E社に損害賠償請求できる場合もある。
*民法715条

3 正しい。不法行為の被害者が、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものにかぎり、不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきであるから(最判昭44.2.27)、弁護士費用も請求することができる。
*民法709条

4 誤り。不法行為による損害賠償請求権は、期限の定めのない債務であるが、損害発生の時から直ちに履行遅滞に陥り、遅延損害金が発生する(判例)。


【解法のポイント】この問題は、かなり難しかったのではないかと思います。肢2は、具体的な状況により異なるでしょうから、保留にして、次の肢に進むしかないでしょうね。そして、次の弁護士費用の損害賠償請求ですが、これは知識として知らなかったとしても、ある程度請求できるというのは分かった方もおられると思います。ただ、全体としては難しかったでしょう。