下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。
平成26年 マンション管理士 本試験 【問 13】

【動画解説】法律 辻説法

【問 13】 高齢のAは、甲マンションの201号室を所有していたところ、アルツハイマー症状が見られるようになり、Bから「このマンションは地震による倒壊の恐れがあり、せいぜい200万円の価値しかない」と言われて、代金200万円でBに対し売却してしまったが、その201号室の売却当時の時価は約2,000万円であった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 AB間の売買契約の後に、Aの子がAについて家庭裁判所に後見開始の審判の申立てを行い、Aが成年被後見人となったことにより、AB間の売買契約は、その締結時に遡及して無効となる。

2 Bが201号室の所有権移転登記をした後に、AB間の売買契約の経緯を知らないCが、Bの登記を信じて転売を受けた場合でも、Aが売買契約締結当時、Aに意思能力がなかったことが証明されたときは、Aは売買契約の無効を理由として、Cに対して同室の返還請求をすることができる。

3 Aは、Bの行為は暴利行為であり、公序良俗違反であるとして、売買契約の無効を主張することができるが、その権利行使は、Aがその売買による損害を知ってから3年以内にしなければならない。

4 Aが売買契約後に死亡した場合、Aの相続人は、Bに対して損害賠償請求をすることはできるが、契約の無効の主張又は取消しの意思表示をすることはできなくなる。

【解答及び解説】

【問 13】 正解 2

1 誤り。成年被後見人の法律行為は、取り消すことができるが、後見開始の審判以前の行為まで取り消せるわけではない。
*民法9条

2 正しい。意思能力がなかったことによる無効は、善意の第三者に対抗できる。したがって、Aは売買契約の無効を理由として、Cに対して同室の返還請求をすることができる。また、登記には公信力がないので、登記を信じたとしてもCが所有権を取得することはできない。
*民法3条の2

3 誤り。「取消」権は、追認をすることができる時から5年間、行為の時から20年を経過したときは、時効によって消滅するが(民法126条)、無効については、このような権利行使の期間制限はない。

4 誤り。相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するので、契約の無効の主張又は取消しの意思表示をする権利も承継する。
*民法896条


【解法のポイント】肢2の正解肢について、制限行為能力を理由とする取消を善意の第三者に対抗できるか、というのは普通の問題ですが、意思表示の無効を善意の第三者に対抗できるか、というのは珍しい問題だと思いますが、普通に考えれば分かるでしょう。