下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 平成24年 問9

【問 9】 区分所有者の管理費の滞納が共同利益背反行為に該当する場合において、当該区分所有者を被告(以下「被告」という。)として、管理者が、区分所有法第59条の区分所有権及び敷地利用権の競売(以下「競売」という。)を請求する場合の訴訟に関する次の記述のうち、区分所有法、民事訴訟法及び民事執行法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

1 競売の訴訟の口頭弁論終結後から競売開始までの間に、被告が区分所有権及び敷地利用権を第三者に譲渡した場合には、管理者は、その譲受人に対しては、当該訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできない。

2 競売の請求の訴えにおいて、管理者は仮執行の申立てを行うことができ、当該訴訟において勝訴判決を得た場合、仮執行の宣言を付した判決を債務名義として、競売を行うことができる。

3 競売は、滞納管理費を回収するために行われる担保不動産競売であるので、区分所有権及び敷地利用権に設定されていた担保権が買受人に引き受けられることはない。

4 競売の目的である区分所有権及び敷地利用権にその価額を上回る優先債権がある場合において、競売による買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計額に満たないときは、競売を行うことができない。

【解答及び解説】

【問 9】 正解 1

1 正しい。判決が確定した場合でも、競売の訴訟の口頭弁論終結後から競売開始までの間に、被告が区分所有権及び敷地利用権を第三者に譲渡することは妨げられず、この場合には判決の効力は譲受人には及ばず、当該訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできない。
*区分所有法59条3項

2 誤り。区分所有権及び敷地利用権の競売をする権利は、判決による区分所有権等の競売権の発生の宣言を求める形成の訴えである。したがって、競売権は判決の確定を待って生じるので、その勝訴判決に対しては仮執行の宣言を付することはできない。

3 誤り。区分所有権等の競売は、担保不動産競売ではなく、民法執行法195条の「その他の法律の規定による換価のための競売」に該当する。

4 誤り。競売の目的である区分所有権及び敷地利用権にその価額を上回る優先債権がある場合には、配当を受けることは期待できないが、競売自体は行うことができ、配当要求をすることにより、時効の完成を猶予させる効果はある。


【解法のポイント】この問題は、肢2以下は、おそろしく難しい問題だったと思います。まあ、間違えても仕方のない問題といえるかもしれませんが、肢1の正解肢の知識は押さえておきたいところですし、これさえ分かれば、正解は導けます。