下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。
マンション管理士 過去問解説 平成23年 問13
【問 13】 甲マンションの管理組合(区分所有法第3条に規定する区分所有者の団体をいう。以下同じ。)は、各戸の専有部分に立ち入り、専用使用権の設定されたベランダを修繕する予定であったが、301号室の区分所有者である一人住まいのAが、工事予定時期に長期に出張することになった。Aは、管理組合と協議し、301号室の鍵を出張期間中管理組合に預けることとした。この場合の預かった鍵に関する次の記述のうち、民法及び区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。
1 Aが出張している間に、Aの友人であるBが管理組合事務所を訪れ、「301号室の鍵を貸してくれ。」と言ってきたときは、管理組合は、Aに確認するまでもなく、Bに鍵を貸与しなければならない。
2 ベランダの工事の最中、管理組合は、301号室の鍵を側溝に落とし紛失してしまったが、その鍵を無償で預かっているときは、管理組合は鍵の交換等に要する費用は負担しなくてよい。
3 工事の着手が遅れ、Aが出張から戻った後にベランダの工事を行うことになったときは、管理組合は、工事の便宜のため、Aに断ることなく合い鍵を作ることができる。
4 出張中に、AがCに301号室を譲渡した場合において、Cが鍵の返還を求めて訴えを提起した場合は、管理組合は、遅滞なくその事実をAに通知しなければならない。
【解答及び解説】
【問 13】 正解 4
1 誤り。受寄者は、寄託者の承諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、寄託物を第三者に保管させることができない。したがって、Aの承諾なく勝手にAの友人Bに鍵を貸与することはできない。
*民法658条2項
2 誤り。無報酬で寄託を受けた者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。ただ、鍵を側溝に落とし紛失することは、この注意義務にも違反していると認められるので、管理組合は鍵の交換等に要する費用は負担しなければならない。
*民法659条
3 誤り。受寄者は、寄託者の承諾を得なければ、寄託物を使用してはならない。Aが鍵を預けたのは、あくまで長期出張期間中に工事が行われるからであり、工事の着手が遅れた場合は、Aが出張から戻ったときに鍵を返還しなければならず、Aの承諾なく合い鍵を作ることはできない。
*民法658条1項
4 正しい。寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起したときは、受寄者は、遅滞なくその事実を寄託者に通知しなければならない。
*民法660条1項
【解法のポイント】この問題も、ある意味では常識的に判断して正解が出るかもしれませんが、法的な根拠を含めて正解を出すのは難しい問題といえるでしょう。ただ、正解肢の肢4は、寄託の問題があまりポピュラーではないとはいえ、条文そのままの問題です。