下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 平成22年 問16

【動画解説】法律 辻説法

【問 16】 甲管理組合が看板製作業者Aに対して、マンションの屋上に設置されている甲所有の看板を撤去し新しい看板に取り替える請負工事を発注したところ、工事中にAの従業員の過失により落下事故が発生した。この件に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。ただし、甲において、注文又は指図について過失はなかったものとする。

1 落下した看板によって、通行人を負傷させ、Aが使用者責任に基づき被害者への損害を賠償した場合、Aは、注文者である甲に対して求償することはできない。

2 落下した看板によって、隣家に損傷を与えた場合、甲は看板の所有者として隣家の所有者に対して責任を負う。

3 マンションの居住者が、カラーコーン等で仕切られた工事区域に無断で立ち入り、落下した看板により負傷した場合、当該マンションの居住者は、Aに対して不法行為に基づく損害賠償を請求することはできない。

4 落下した看板によってマンションの屋上に損傷を与えた場合、甲は、屋上に損傷を受けた時から起算して、1年以内でなければ、損害賠償の請求はできない。

【解答及び解説】

【問 16】 正解 1

1 正しい。注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。したがって、Aが甲に対して求償することはできない。
*民法716条

2 誤り。注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。本問は、請負工事に関して生じた事故であり、あくまで請負人が損害賠償の責任を負う。
*民法716条

3 誤り。本問は、あくまでAの従業員の過失による落下事故であるから、マンションの居住者はAに対して不法行為に基づく損害賠償を請求することができ、居住者の無断立ち入りの点は、過失相殺の問題となるだけである。
*民法722条2項

4 誤り。甲は、マンションの屋上の損傷に対して不法行為に基づく損害賠償請求をすることができるが、不法行為に基づく損害賠償請求は、被害者が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき、又は「不法行為の時から20年」を経過したときは、時効によって消滅する。1年ではない。
*民法724条