下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 平成22年 問15

【動画解説】法律 辻説法

【問 15】 甲マンション管理組合(管理者A)が、敷地内の樹木の伐採及び剪定(せんてい)について、造園業者Bと請負契約をした場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び、判例によれば、正しいものはどれか。

1 AB間において、報酬支払を「業務着手の日の7日前までに3割の前払金、業務完了後7日以内に残りの金額」と約した場合、業務着手の7日前までにAがBに3割の前払金を支払わなかったときは、Bは直ちにAとの契約を解除することができる。

2 Bが当該業務に着手し、剪定作業等が終了した時点で、甲の内部で伐採木の選定をめぐり紛糾したため、やむを得ず伐採を中止することとした場合、AはBの損害を賠償して、契約を解除することができる。

3 業務のおおよそ半分を終えた時点で、Bの責めに帰すべき事由により請負契約が終了した場合において、Bが債務不履行責任を負うときは、Aは、Bに対して残った業務を実施するために要する費用の全額について、損害賠償を請求することができる。

4 業務完了後、業務内容に契約不適合があり、AがBに対して損害賠償の請求をする場合において、Aの損害賠償請求権とBの報酬残金請求権とは、相殺することができない。

【解答及び解説】

【問 15】 正解 2

1 誤り。請負契約においては、報酬は基本的に後払いであるが(民法633条)、本肢のような特約も有効である。そして、前払金を支払わないというのは、履行遅滞であるから、「相当の期間を定めてその履行の催告」をした後でなければ、契約の解除をすることができない。
*民法541条

2 正しい。請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。これは、請負人の債務不履行がなくても認められるものであり、本肢のような事情があっても、Aは請負契約を解除することができる。
*民法641条

3 誤り。請負において、仕事が完成に至らないまま契約関係が終了した場合に、請負人が施工ずみの部分に相当する報酬に限ってその支払を請求することができるときには、注文者は、右契約関係の終了が請負人の責に帰すべき事由によるものであり、請負人において債務不履行責任を負う場合であっても、注文者が残工事の施工に要した費用については、請負代金中未施工部分の報酬に相当する金額を超えるときに限り、その超過額の賠償を請求することができるにすぎない(最判昭60.5.17)。したがって、Aは、Bに対して残った業務を実施するために要する費用の全額について、損害賠償を請求することができるわけではない。
*民法416条

4 誤り。業務完了後に、業務内容の契約不適合を理由に損害賠償を請求するのは、契約不適合責任の追及ということになるが、この契約不適合責任の追及としての損害賠償請求権と報酬の残金請求権について、特に相殺を禁止するような規定はないので、同じ金銭債務同士であるから相殺することができる。
*民法564条、559条