下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 平成22年 問13

【動画解説】法律 辻説法

【問 13】 マンション業者Aが建設業者Bに請け負わせて、完成させたマンションの10階の1室(1001号室)をCに売却した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 AがCに売却する際、ベランダから山が見え、眺望がよいと説明していたにもかかわらず、3年後に別のマンション業者Dが近くに高層マンションを建設し、1001号室からは、山が見えなくなった。AのCへの売却時にはDの建築計画が存在しなかった場合でも、説明と異なり眺望が守れなかったことを理由に、Aは、Cに対して債務不履行責任を負う。

2 Aは、売却前に、台所の自動式防火扉が設置され安全性が優れていると説明していたにもかかわらず、その扉のスイッチを切ったままにそのことを告げずに1001号室をCに引き渡した。また、スイッチもわかりにくい場所にあったので、Cはスイッチが切られていることを知らなかった。その後、Cの過失により台所から失火し、自動式防火扉が作動しなかったため、逃げ遅れたCは、大やけどを負った。この場合、Aは、Cに対して、スイッチの入れ方等を説明しなかったことを理由に、債務不履行責任を負う。

3 Aは、Bに対し、天井及び床に防音性の高い施工を指示したが、Bは、その指示に反し、防音性の低い工事を行った。Aから、購入前に防音性が優れていると説明を受けていたCは、防音性が説明通りに確保されていないことを理由に、Bに対して補修工事を求めることはできるが、Aに対して損害賠償の請求はできない。

4 Aは、売却に当たって、Cに耐震強度は十分確保されていると説明していたが、後日、Bが設計を依頼した一級建築士Eの法令義務に違反する設計により、耐震強度が著しく不足することが分かった。この場合、Cは、売主たるAに対しては損害賠償を請求することができるが、Eに対しては不法行為に基づく損害賠償の請求はできない。

【解答及び解説】

【問 13】 正解 2

1 誤り。AがCに対して売却する際には、Dの建築計画が存在しなかったわけであるから、Aは調査義務を果たしているといえるので、Cに対して債務不履行責任を負う必要はない。
*民法415条

2 正しい。Aは、売却前に、台所の自動式防火扉の説明をしていたにもかかわらず、その扉のスイッチを切ったままにそのことを告げずに引き渡している以上、防火扉についての説明義務を果たしているとはいえず、債務不履行責任を負う。
*民法415条

3 誤り。まず、CがBに対して修補工事を求めることができるかどうかであるが、CとBは契約関係になく、請求する根拠は不法行為ということになるが、不法行為は金銭賠償が原則であり(民法722条1項)、修補工事を求めることはできない。なお、「A」はBに対して請負契約に基づく担保責任を追及でき、追完請求として修補工事を求めることができるが、担保責任は契約上の地位に基づいて請求できるものであり、譲受人(C)は請求できない。次に、CはAに対して損害賠償の請求ができるかどうかであるが、債務不履行に基づく損害賠償の請求には、債務者(A)の帰責事由が必要とされている。本肢では、Aは、Bに対し、天井及び床に防音性の高い施工を指示しているので、Aには帰責事由はないものと認められる。また、契約不適合責任も債務不履行の一種なので、同様に契約不適合責任に基づく損害賠償を請求することもできない。したがって、Aに対して損害賠償の請求ができないという点は正しい。
*民法722条1項、415条

4 誤り。当該マンションは、耐震強度が十分確保されていないので、目的物に契約不適合があるが、損害賠償を請求するには売主に帰責事由が必要であるから、損害賠償を請求することはできない。ただ、Eは故意又は過失によりCに対して損害を与えているので、EはCに対して不法行為に基づく損害賠償の責任を負う。
*民法709条