下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 平成22年 問12

【動画解説】法律 辻説法

【問 12】 甲管理組合は、規約共用部分である101号室をAに事務所として賃貸していたが、賃貸借期間が満了したので、Aは原状回復のうえ明け渡し、甲は敷金を返還することとなった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。ただし、原状回復の範囲及び費用負担については、契約に当たって十分な説明が行われていたものとする。

1 敷金については、明渡しの時点ではじめて返還請求権の有無や返還額が確定するので、甲の敷金の返還とAの101号室の明渡しは、同時履行の関係には立たない。

2 明渡し時点で、Aの原状回復に不完全な部分があることが判明した場合、原状回復に要する費用は、損害として、Aに返還すべき敷金から控除される。

3 賃貸借契約終了時にAに賃料不払の債務がある場合において、当該賃料不払債務を敷金から控除するときは、賃料請求債権を自働債権とし、敷金返還請求権を受働債権として、対当額にて相殺する旨の意思表示をしなければならない。

4 賃貸借契約終了後、Aが101号室を明け渡さず引き続き使用している場合、その間の賃料相当額は、明渡し義務不履行に基づく損害賠償又は不当利得として、敷金から控除される。

【解答及び解説】

【問 12】 正解 3

1 正しい。敷金返還請求権は、明渡しの時点で発生するものであるから、敷金返還請求権と賃借物の引渡しは同時履行の関係には立たない。
*民法622条の2第1項1号

2 正しい。敷金返還請求権は、明渡しまでの債務不履行による損害賠償請求などを控除して発生するものであるから、賃借人が原状回復の義務を果たしていない場合は、原状回復に要する費用を敷金から控除することができる。
*民法622条の2第1項

3 誤り。敷金返還請求権は、明渡しまでの賃料不払いなどの債務不履行による損害賠償請求などを控除して発生するものであり、賃料請求債権を自働債権とし、敷金返還請求権を受働債権として、対当額にて相殺する旨の意思表示まで行う必要はない。
*民法622条の2第1項

4 正しい。敷金返還請求権は、明渡しまでの債務不履行による損害賠償請求などを控除して発生するものであり、明け渡さず引き続き使用している場合には、その間の賃料相当額は、明渡し義務不履行に基づく損害賠償又は不当利得として、敷金から控除されることになる。
*民法622条の2第1項