下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 平成21年 問12

【動画解説】法律 辻説法

【問 12】 甲マンションでは、管理組合(区分所有法第3条に規定する区分所有者の団体をいう。以下同じ。)の集会で、共同で新たなインターネット通信設備を設置することが決議され、設備設置会社Aが当該設備の設置工事を行った。これに伴い、区分所有者B~D又は区分所有者の子EとAとの間に生じた紛争に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Bが従前のインターネット通信設備に対する機器を買い換えた直後に当該設置工事が行われ、その費用が無駄になってしまった場合、AB間で当該機器の買取りについての契約がなかったとしても、Bは、Aに対し、その買取りを請求することができる。

2 当該設置工事に伴う部屋の配線工事の際にAの過失によりCのパソコンの印刷機が全損したため、CがAに対し損害賠償を請求する場合、当該印刷機の全損時の価値分についての損害賠償の請求だけでなく、当該賠償額に対する遅延損害金も請求することができる。

3 当該設置工事の際にAの過失によりDがベランダに設置していたエアコンの室外機に傷をつけられた場合、Dは、当該傷を発見してから1年以内であれば、Aに対し、当該傷の修補請求をすることができる。

4 当該設置工事に伴う部屋の配線工事の際にAが過失により幼児Eに怪我を負わせたため、Eが損害賠償を請求する場合、Eの親に監督上の過失があったときでも、その過失を理由に過失相殺により賠償額を減額することはできない。

【解答及び解説】

【問 12】 正解 2

1 誤り。AB間では、インターネット通信設備の設置の契約しかない以上、従前のインターネット通信設備に対する機器の買取までは、BがAに対して請求することはできない。これは、当該設置契約の解釈の問題である。

2 正しい。不法行為による損害賠償請求権については、期限の定めのない債権ではあるが、損害発生と同時に履行遅滞になるものとされている(判例)。したがって、印刷機の損害賠償の請求だけでなく、当該賠償額に対する遅延損害金も請求できる。
*民法412条3項参照

3 誤り。DのAに対する請求の根拠が不法行為である場合、その期間は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間である。また、不法行為の場合、瑕疵修補を請求することはできない。なお、請求の根拠が、インターネット通信設備設置の請負契約であると考えれば、請負人の担保責任として契約不適合の修補というのは認められているが、請負人の担保責任は、「仕事の目的物に契約不適合」がある場合であり、工事の際に損害を与えたような場合は担保責任は追及できない。
*民法724条

4 誤り。被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。そして、子が被害者である場合の親のような監督義務者の過失を「被害者側」の過失と考えて過失相殺が認められる(判例)。
*民法722条2項