下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 平成19年 問16

【動画解説】法律 辻説法

【問 16】 甲マンションの区分所有者Aが「理事長Bが修繕積立金の不正流用により管理組合に損害を与えたので、その損害の弁償と理事長の辞任を要求する」旨の文書を各戸に配付した。これに対してBは、事実無根の名誉毀損であるとして、Aに対して不法行為に基づく損害賠償と謝罪を請求した。この場合において、ア~エについてAが立証すれば名誉毀損が成立しないものとされる組合せは、民法の規定及び判例によれば、次のうちどれか。

ア 配付した行為が違法行為の摘発という社会全体の利益に係るものであること。

イ 配付の目的がもっぱら修繕積立金の適正な管理を図るためのものであること。

ウ 文書に記載された事実が真実であると信じるについて相当の理由があること。

エ 文書の各戸への配付によらなければBの行為を阻止できないものであること。

1 アとイとウ
2 イとウとエ
3 ウとエとア
4 エとアとイ

【解答及び解説】

【問 16】 正解 1

他人の身体、自由、財産権だけでなく、名誉を侵害した場合にも不法行為が成立する。この名誉毀損とは、人の社会的評価を低下させることであるが、公表されたことが、1.公共の利害に関する事実に係り(事実の公共性)、2.その目的が専ら公益を図ることにあったと認められ(目的の公益性)、3.真実であること(事実の真実性)の証明があったときは、名誉毀損は成立しない。
*民法710条

ア 立証が必要。これは1.の事実の公共性に関するものであり、これが立証されれば名誉毀損が成立しないための要件である。
*民法710条

イ 立証が必要。これは、2.目的の公益性に該当し、これが立証されれば名誉毀損が成立しないための要件である。
*民法710条

ウ 立証が必要。これは、3.の事実の真実性に関するものであるが、この事実の真実性については、事実が真実であることの証明がなくても、事実を真実と信じるについて相当の理由がある場合には、名誉毀損は成立しないものとされる。
*民法710条

エ 立証は不要。これは上記のいずれにも該当せず、これは名誉毀損の成否とは関係がない。
*民法710条

以上より、Aが立証すれば名誉毀損が成立しないものとされる組合せは、アとイとウであり、正解肢は肢1となる。