下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。
マンション管理士 過去問解説 平成17年 問16
【問 16】 Aは、その所有する甲マンション(管理組合乙)の店舗部分(102号室)において喫茶店を経営しており、その内装改修のため、工事業者Bに内装工事を発注した。この場合に関する次の記述のうち、民法及び区分所有法の規定並びに判例によれば、誤っているのはどれか。
1 乙の規約で専有部分の修繕等を行う場合にはあらかじめ書面による乙の承認を受けるべき旨が定められているにもかかわらず、Aが乙の承認を受けないで工事契約を締結した場合であっても、その契約は、当然には無効とはならない。
2 内装工事で設置された照明器具が工事契約で特にデザインにつき約定されていた場合に、メーカーが同じで、照度、消費電力等の照明器具としての性能は同等であるもののデザインが全く異なるものであったときは、Aは、Bに対して、相当な期間を定めて目的物の修補を請求することができる。
3 工事契約で工期の遅延につき特別の合意をしていない場合に、Bの資材の調達の手違いにより内装工事の完成が約定工期より遅れ、喫茶店の開店が遅れたときは、Aは、Bに対して、開店が遅れたことによる営業上の損害につき損害賠償を請求することができる。
4 Aは、Bの塗料の選定が不適切であったため施工後の塗装の乾燥が十分でないことを知らずに開店したところ、来客が衣服を汚損した場合、被害者に支払った損害賠償金損害額を工事の契約不適合による損害賠償としてBに請求するには、Bの塗料の選定に過失があったことを証明する必要がある。
【解答及び解説】
【問 16】 正解 4
1 正しい。Aが乙の承認を受けないで工事契約している場合、それはAの債務不履行にはなるが、工事契約そのものが無効となるわけではない。
*民法415条
2 正しい。仕事の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、目的物の修補による履行の追完を請求することができる。
*民法562条1項、559条
3 正しい。Bの資材の調達の手違いにより約定工期より遅れているわけであるから、Bの債務不履行になる。したがって、開店が遅れたことによる営業上の損害を損害賠償として請求することができる。
*民法415条
4 誤り。仕事の目的物に契約不適合があるときは、注文者は、損害賠償の請求をすることができる。この契約不適合責任は、債務不履行であるから、損害賠償を請求するには債務者に帰責事由が必要であるが、債務者が責任を免れるには、「債務者」が自己に過失がなかったことを証明しなければならない。債権者(A)が、債務者の過失を証明するのではない。
*民法415条1項